現実の身体の時間は短い。虚構に身を委ねれば、遥かな過去から未来まで、精神は自在に旅をする。あの月夜の約束を追いかけて、千代子は虚実を股にかけ走り続ける。その原動力は、その終着点は。ラストの台詞こそがこの映画の珠玉。疾走し続けた彼女の人生が眩い光を放つ。
昨年の「パーフェクトブルー」に続きリバイバル上映で念願の劇場初鑑賞。畳みかけるような場面展開とトリッキーな平沢進音楽との相乗効果でスクリーンで観る気持ちよさがどんどん増幅する。執拗なまでの左→右移動を続ける彼女を追う強制横スクロール感も劇場ならではの感覚ですげぇってなった。
「他人に自分の人生乗っけてんじゃねえよ」みたいな妄言を吹き飛ばす、ラストのもっとも主体的な行動としての推し活の肯定は本当にポジティブな余韻を残す。あらゆる点で今敏監督の最高傑作(東京ゴッドファーザーズもリバイバルしてください)。
この映画の癖になる場面転換、先日TVで見直した「映画大好きポンポさん」でも踏襲されてたことを思い出して日本アニメーション界に今敏イズムの継承あるな!と喜んでたらポンポさんの平尾隆之監督(だよね?)の名前がエンドロールにあって、直系じゃないですか凄いとなった。