竜泉寺成田

千年女優の竜泉寺成田のネタバレレビュー・内容・結末

千年女優(2001年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

今敏作品としては最後の鑑賞だったが、これが一番好きかもしれない。
うまく感想はまとまらずだけれど、想像というものの華やかさと、演技という行為の力強さを感じた。
思えば僕らだって実は日々何かを演じているわけで、記憶だって主観によって取捨選択した結果再生される物語なのだから、ある意味で僕らの人生もまた千年女優めいているのかもしれない。
千代子の最後の言葉である「だって私、あの人を追いかけてる私が好きなんだもの」は、説明しすぎだと叩かれがちだし、ともすれば昨今SNSにあふれている自己正当化めいた慰めに聞こえなくもないのだけれど、実は僕らだってみんなそうやって生きている節がある。
千代子が追いかけている「あの人」は代替可能な代名詞のようなもので、僕らの一人一人が各々の「あの人」を追い求めて生きていて(もちろんXは人には限らない)、そしてそれは千代子が「あの人」の顔を思い出せないように実態のない空白であり、僕らはみんなそういう空白をアイデンティティだとして生きているのだと思う。
竜泉寺成田

竜泉寺成田