うあ

トースト 〜幸せになるためのレシピ〜のうあのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

ナイジェルが何度も何度も大事な人と強制的に引き裂かれ続ける話だった。
まず素材の味の良さを教えてくれたセクシーな庭師のジョシュ。ナイジェル少年が彼の好物をワクワクしながら料理して待ってたのに知らぬ間に解雇。
次に母親。クリスマスにパイを焼く約束を果たせないまま亡くなってしまう。
そして学校の親友。名前も出てない脇キャラだけどもいつもナイジェルを励ましてナイジェルが悩んでもナイジェルが不安になることを言わない優しい少年。無理矢理引っ越ししたせいで離れ離れ。
更にバイト先のバレエダンサー。弄ばれて一瞬で捨てられた。
父親だけが最後の頼み綱であったが、厳格で息子を甘やかさない教育方針だったためあまり親子の心温まる交流などもないまま病死。

幸せになるためのレシピを探し続けていたナイジェル。しかし映画ではとうとう見つけられなかった。
ポッター夫人には幸せになるためのレシピがあった。それは男の胃袋を掴んではなさいレシピだった。

ナイジェルが幸せになるためのレシピはポッター夫人のような誰かの気を惹くための物ではなく、子供の頃布団の中でこっそりレシピ本を読んで感じた料理への好奇心を存分に発揮すること。自分のためのレシピなんだと思う。
大事な人と続けざまに引き裂かれ続けたせいで愛されたくて父親の気を惹こうと料理をしていたのをラストでようやく反省する。(まあ父親不在の家でポッター夫人の顔をもう見たくなくなっただけかもしれないけど)
これは自伝を元に作られたのは承知しているけれど、ポッター夫人は所謂ナイジェルの悪い欲望を映し出したキャラクターじゃないかと思った。
誰かに対抗するための料理でなく、料理そのものに真摯に向き合うべきだった。美味しい料理を追い求め続けること、それこそが彼の本当の幸せになるためのレシピだったと思う。
なんだかんだでナイジェルの料理を一番評価していたのはポッター夫人というのが皮肉。
(有能故にあれだけ牽制を張ってたわけだし)
最後、ポッター夫人と和解しなかったことは妥当だと思った。
憎しみ故ではなく、ポッター夫人とナイジェルは料理の解釈が違ったから袂を分かったのだと思った。
うあ

うあ