爆裂BOX

天軍の爆裂BOXのレビュー・感想・評価

天軍(2005年製作の映画)
3.7
2005年10月、韓国と北朝鮮が極秘に開発した核兵器”飛撃震天雷”のアメリカへの引き渡しが決定する。これに不満を抱いた北朝鮮のカン・ミョンギル大佐は核物理学者のキム・スヨンを拉致し、飛撃震天雷から核弾頭を奪い逃走する…というストーリー。
現代の韓国と北朝鮮の兵士たちが核弾頭と共におよそ430年前の戦乱の世にタイムスリップするSF歴史アクションです。
韓国軍のバク・チョンウ少佐率いる部隊はカン大佐たちを追撃するが、激しい銃撃戦の最中、地球の傍を彗星が通過した瞬間、時空が歪みそこにいた南北軍人の姿が消えてしまう。南北軍人とキムが気付くと、そこは情け容赦のない蛮族が力を振るう、無慈悲な戦場だった、という内容です。
韓国版「戦国自衛隊」といった内容のSFミリタリー歴史アクションです。
1572年にタイムスリップしてしまったカン大尉とパク少佐たち南北軍人とキム博士。蛮族が暴力をふるう只中に現れた彼らは襲ってくる蛮族に思わず銃を取って反撃、蛮族を撃退して農民達からは天軍と崇められます。その後、彼らの武器を盗もうとする男李舜臣と出会い、その男が豊臣秀吉率いる333隻の大船団を僅か13隻で撃退した伝説の英雄であり、そこで彼らは自分達がタイムスリップしたことを知ります。
出会った李舜臣はコソ泥や朝鮮人参の密売で日々を暮らすとても英雄に見えないダメ男で、英雄である彼に憧れるファン・ジョンミン演じるパク少佐は彼を筋トレさせたり喝入れたりして何とか英雄に育て上げようとする中、カン大尉たち北朝鮮兵士は紛失した核弾頭の行方を追う様がコミカルなタッチを交えながら描かれていきます。ここら辺は如何にも韓国映画っぽいですね。
武官試験に落ちて自暴自棄な感じでコソ泥したりして暮らすとても英雄になるとは思えないダメ人間な李舜臣が、若い韓国軍兵士との交流やその兵士が目の前で殺されたり、同じく交流のあった幼い少女が蛮族にやはり目の前で殺される姿を見て、蛮族と戦う決意をして、その中で作戦立案したりして英雄としての心持を持った人間として変化していく展開はベタながら良いですね。
みんな大好きマブリーことマ・ドンソクが北朝鮮兵士役で出演していて、序盤の方で牢に捕らえられた仲間を牢屋を怪力でこわして助け出したり、ニコニコ笑いながら韓国軍兵士が飯食ってる所に加わって止められてもそのまま飯食ったり、幽霊が出ると噂の寺を拠点にすることにビビって、ネズミが出て更にビビったり、韓国軍兵士たちが拍手する中一緒にニコニコしながら拍手して北朝鮮の軍曹に怒られたりと力持ちで可愛いという今とあまり変わらないキャラ演じてます。今作を機に本格的に韓国で俳優活動始めたようですね。
李舜臣から協力を求められた南北軍人たちが、協力して共に蛮族に立ち向かう決意するも合戦当日に彗星が通過して元の時代に戻れる可能性があることがわかり、一旦は帰るほうを選ぼうとするも、カン大尉や彼の部下や韓国軍兵士たちがこの時代に残って戦う決意をするシーンももうベタベタなんだけどアツくてグッときます。特にこの時代の物持ち帰って高値で売って金持ちになって女房と3人の子供喰わせて大学にやるんだ!と言っていた韓国軍軍曹が残る決意する所はかなりグッときたな。
そこからの合戦シーンはコミカルだった前半とは打って変わって壮絶です。攻め込んできた蛮族たちを地面に仕掛けた爆弾爆発させて、礫で馬や敵を攻撃するシーンは結構エグく感じました。主人公達が持ってる武器も小銃と手榴弾だけなので、後半、小銃撃ちまくって蛮族たちなぎ倒した後、弾が切れたら銃剣取り付けてそれを使って突撃して刺しまくったりと中々に泥臭く壮絶な戦い繰り広げます。腕切断されたり、刀で切られた腹から血が噴き出したりちょっとしたゴア描写もあったのは驚きました。合戦の中で一人、また一人と散っていく姿はお約束ながらグッときます。軍曹の「俺より先に死んだら承知しないぞ」の台詞の後の展開は正直ちょっと笑った。
マブリーもキム博士の警護を任され、彼女の乗ったゴムボート押しながらも、追い掛けてきた蛮族の放った矢をあのふっとい二の腕で受け止めて斧振り回して戦い、最後は上半身裸で蛮族たちをボコボコに殴りまくるという「これが見たかったんだよ!」という戦い方見せてくれます。惜しかったなぁ。後、ちょっとだったのに。
現代に戻れるのがあの人だけだったのはまあ、この中ではそうなるかという感じですね。現代では10分くらいしか経過してないのかな。
ラストの秀吉の大船団迎え撃つ戦いを控えた船の中で、あの二人が残って参加してるとは思わなかった。一人はまあ、予想できたけどもう一人は「アンタが残ったか!」とちょっとビックリしました。
吹き替え声優陣も森川智之さんに井上和彦さんと豪華ですね。
タイムスリップSFアクションとしてはコミカルさもありながら戦闘シーンも激しくて、ベタな展開も楽しめる作品でした。