アキラナウェイ

ジェシー・ジェームズの暗殺のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

3.5
思い込みって怖いもので、ずっとジャケットに写っているのはコリン・ファレルだと思っていて、見向きもしなかった映画。

ブラピと知ったら俄然観る気が湧くという手のひらの返しよう。

米国史上最も有名なアウトロー、ジェシー・ジェームズ(ブラッド・ピット)。1861〜65年の南北戦争後、仲間を率い、25件以上の強盗と17件もの殺人を犯した重罪人でありながら、民衆からは英雄とさえ称えられた男。彼を暗殺したのは、誰よりも気弱で、誰よりも彼に憧れていた20歳の若者だった。

160分という長尺。
栞の様に途中で挟まれる丁寧なナレーション。

こ、こ、これは…。
もう、本だ。読書だ。読書の秋だ。

この作品、ジェシーは暗殺された事がタイトルでネタバレているので、観衆はただひたすら彼が殺されるのを待つ格好となる。が、前述の通りの長尺と抑揚のないストーリーは、かなりキツい。目がしょぼしょぼしてきたので、ジェレミー・レナーが(死体として)お尻をぷりんと出した辺りで一旦中断。

2日に分けて鑑賞した事で気持ちが切り替わり、それが功を奏したのか、後半はテンポが良くなった事も手伝って、かなり集中して鑑賞出来た。

冗長なドラマ運びは残念としか言いようがないが、役者の演技という面では惹き込まれるものがある。

先ずは、ジェシー・ジェームズという絶対的なカリスマを演じたブラッド・ピット。

寝首をかかれない様に拳銃に手を掛けたまま就寝し、起きている時も、全てを見透かしているかの様な眼差しが印象的。笑っていても機嫌が良いとは限らない。一瞬でも気が抜けない。纏う空気すら重い。ブラッド・ピットらしい静かな演技が、ジェシーという隙のない男の恐ろしさに拍車をかける。

その男の顔色を伺いながら、重たい空気を和らげようと思いつくままに冗談を飛ばすチャーリー・フォード役にサム・ロックウェル。

そして、サムの実弟ボブをケイシー・アフレックが演じる。20歳の若者は線が細く、声が高いので、仲間内からは常に馬鹿にされている。しかしジェシーに対する憧れは人一倍強く、もはや崇拝に近い。

一人の臆病者が抱く憧れがいつしか殺意に変わり、その一瞬の機会を伺う空気感の出し方。ブラッド・ピットとケイシー・アフレックの、瞳の動きだけで魅せる、無言のやり取りが素晴らしい!

いやぁ、やっぱり上手い。
前述の3人による会話劇が特に顕著。
ジェシーの機嫌を取りながら、サムの空笑いが響く中、ジェシーはボブを牽制して彼の自尊心を敢えて突いてみたりして、それに案の定むくれてしまうボブとか。ここには天才しかいない。

余分な登場人物とエピソードを大胆にカットして120分に収めたとしたら、間違いなく傑作だと絶賛したに違いない。

残念賞。