Masato

チャーリーとチョコレート工場のMasatoのレビュー・感想・評価

3.6

ウォンカに向けて予習(ウォンカはどうやら1971年版の前日譚とのこと)。ティム・バートンは普通の人ですら名前を知っているほど日本で超絶人気の監督だが、その監督の中でもとびきり人気な作品。子どもの頃にテレビでちょこっと見たような記憶。本格的な鑑賞は初。

正直ティム・バートンのポップだけどゴシックホラー感のある奇妙な世界観は好きではないし、本作も所詮ファミリー映画みたいな感覚で見始めたけど、監督らしいテーマで思いの外良かった。

ティム・バートンはその世界観で誤魔化されているけど、実は病んでる映画を作っていることが多い。それは彼の孤独でいじめられっこだった幼少期に起因することが多い。本作のウィリー・ウォンカもバットマン2のブルース・ウェインの如く、工場の中で生きているか死んでいるかも分からないほど籠もりきっていて、人間嫌いで親嫌い。奇妙なキャラとして中和されているが、実際は幼少期の苦い記憶が和らぐこと無く壊れたまま大人になってしまった病める人間として描かれている。

奇々怪々なチョコレート工場の見学の物語のなかにウィリー・ウォンカの心の問題を説得力を持たせて描いているということが凄かった。温かい家庭のチャーリーを序盤にしっかりと描いているからこそ家族という共通項で深堀りされていくところは良かった。誰からも愛されず孤独だと思っていた人間が実は愛されていたと知るまでの物語として主人公ではない人間からテーマが浮かび上がってくる意外性は良かった。

ただし、子ども向けとしてはやや時代を感じさせる描写はあった。オーガストという肥満体型の男の子に対するファットシェイミングや、全世界に金のチケットを配ったのにもかかわらず招待された子どもたちが全員白人。資本主義社会とは無縁のウンパルンパを移住させてタダ同然で奴隷みたいな労働をさせているところとかが搾取的。と悪い子を懲らしめる教訓の作品としては作り手も懲らしめないといけない描写はちらほら。
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