このレビューはネタバレを含みます
キリアン・マーフィの出演する映画を見続けて23作品目。タイプキャストを好まないとのことで出る作品ごとにイメージが違うから「役者ってすごいなぁ」と思ってはいたけれど、ここにきてまた彼の演技力で腰が抜けそうになるとは思わなかった。もし私がキリアンを知らなかったら、そしてもし冒頭で種明かしされていなかったら、ジョンとエマが同一人物とは気づかなかったかもしれない。もちろん、演技だけでなくメイクやウィッグや証明の力も相まってのことではあるが。
エマの格好でジョンの声で喋った時もゾクゾクしたが、火事になる直前に銀行に出勤したのはジョンの格好をしたエマなのだろう。だから引き出した金はエマの手元にあり、エマからマギーに渡る。それが伝わる演技なのが素晴らしい。
邦題のリバースは勝手にReverseかと思っていたが、よく見たらRe:Birthと書いてあった。死んだ母親がエマとして蘇り、虐待されたジョンがジェイクとして蘇る……といったところか。私はヒッチコックの『サイコ』を知らないし、狭義の「サイコ」ではなく接頭辞としてのpsycho-のイメージでいたから、邦題にはさほど違和感を持たなかった。
ジョンの母親が着ていたという、後半でエマが身につけている白と水色のドレスは、原題であるPeacock(クジャク)の体の色だと思われる。町の名前にもなっているし、このタイトルにどんな意味が込められているのかはもう少し考えたい。
他の人の感想を読んでいて理解したが、この町(ピーコック)は日本で言うところのムラ社会だから噂はすぐ広まるし、精神異常がバレたら村八分、そういう嫌なところを知っているからマギーは出ていきたがる。実際に他の誰かが村八分くらっている描写があればその辺がもっとわかりやすかったと思う。