Maoryu

ボディ・アンド・ソウルのMaoryuのレビュー・感想・評価

ボディ・アンド・ソウル(1947年製作の映画)
4.0
ボクシングのチャンピオン、チャーリー(ジョン・ガーフィールド)は防衛戦で八百長を強いられ苦悩するが、頼ろうとした母親と元婚約者ペグ(リリ・パーマー)に拒絶されてしまう。控室に入ったチャーリーはプロデビュー以来、喝采と栄光のために親友を裏切り、母親やペグの反対をよそに裏社会に取り込まれてしまった過去を思い起こす。

「オール・ザ・キングスメン」「ハスラー」のロバート・ロッセン監督による猛烈に見ごたえのある人間ドラマ。
ほぼ同じ時期の「罠」も重かったけど、こちらもかなりダークな内容だ。リアルタイムで進行した「罠」とは逆に、時系列を入れ替えたつくりが実に効果的で、映画のお手本のようだった。

ストーリーはまさに栄枯衰勢、自業自得。
悪の化身とも言える裏社会の大物ロバーツ、実は小心者のチンピラだったプロモーターのクイン、享楽家でパラサイトのアリス。彼らによって天狗になって我を失っていくチャーリーの姿が鮮烈で、後の堕落モノの原型に見える。
一方で親友のショーティはチャーリーの人生の礎というか犠牲になり、ライバルだったベンはなれの果ての姿を見せ、屈強な母親が叱りつけ、誰よりも賢いペグが彼を導く。

そんな周りのキャストの人格を完全に固定化することで、感情が上下に動きまくるチャーリーの変化を際立たせている。
さらに、そこには貧困と戦争の予感、ユダヤ人差別という社会背景もしっかりと乗せてくるところが巧み!
「紳士協定」のジョン・ガーフィールドの熱演も光ってた。

以下、ネタバレあり。

チャーリーの心には、全くブレない母親と最愛のペグの戒めが残っていたんだろう。ボクサーとしての魂、人間としての良心を取り戻す姿に、試合の勝利とともに観ている方は安堵する。
ただ、ハッピーエンドっぽく見えるものの、あの後でギャングたちに何をされるのか… 「罠」のロバート・ライアンように拳を砕かれるのか、命を奪われるのか、心配なまま幕が下りてしまった。
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