ドン・アメチーがジーン・ティアニーをさっと抱き上げた瞬間彼女のライラック色のスカートがふわりと翻り、二人はそのまま扉の向こうへ去る。10年後同じ構図でティアニーを抱き上げて扉の向こうへ去るが、彼女のスカートが翻ることはない。堅実な妻で母である彼女はドレープの無い黒いスカートを履いている。
25年後二人はパーティでくるくる踊り客人たちの輪をはずれて暗転、ティアニーの最期はモノローグであっさり語られる。
死を悲劇的に描くことが周到に避けられ、理解者だった祖父もいつのまにかフェイドアウトして肖像画となる。アメチーの最期は鏡ごしに交代するブロンド美女の看護師が部屋に吸い込まれるだけ。ウェス・アンダーソン『グランド・ブダペスト・ホテル』はこれのオマージュか。
地獄の入口で自分の人生を語るというメタ的な視点が常に軽さを保ってる。"Down?” "No! Up!“ていうのがまた粋。
クロスステッチで作られたオープニングとエンディングが可愛いらしく、エンディングには軍隊に宛てられたメッセージが付されているけど結局公開されなかったということか。
しかしプレイボーイは結婚しないに限る。フェリーニのカサノバみたいな最後がいいよ。
