イワシ

ピアノ・ブルースのイワシのレビュー・感想・評価

ピアノ・ブルース(2003年製作の映画)
4.0
イーストウッドの個人的な音楽史がやがてアメリカの音楽史として纏め上げられる。フッテージ映像がリズムやムードを超越した編集(ジョエル・コックス、ゲイリー・ローチ)でひと続きの音楽になった後、レイ・チャールズによる「アメリカ・ザ・ビューティフル」が高らかに歌われる(ブロンコ・ビリー』の星条旗を縫い合わせたテントを連想せよ)。イーストウッドのアワーミュージックはあまりにもアメリカ映画的だ。

それまですぐ隣に腰下ろしいたクリント・イーストウッドがレイ・チャールズの演奏の途中でやおら立ち上がり、画面から姿を消したかと思うとピアノに寄りかかってその旋律にじっくりと耳を傾けるという動作は、幽霊化というイーストウッド的主題を(おそらくは無意識に)簡潔に演じ切っていて感動的だった。

イーストウッドが調子に乗って「マザー・ファッカー」とつぶやき、レイ・チャールズが爆笑するというあまりにも良いシーンが好きすぎる。
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