TaiRa

最後の人のTaiRaのレビュー・感想・評価

最後の人(1924年製作の映画)
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おそらく世界初の便所メシ映画。侘し過ぎる。

99%映像だけで構成され、中間字幕がほぼ無い純サイレント映画。映像だけで見せるという点でヒッチコックとトリュフォーが「ムルナウはヤバいよねー」みたいに言ってた気がする。高級ホテルの老ドアマンが、老いを理由に無情な部署替え食らう。便所係になり尊厳だだ下がりで落ち込みまくる老人の映画。表現主義としてはやり過ぎず丁度いい。ドアマンを降ろされてからエミール・ヤニングスの姿勢がどんどんジジイになって行く。心情と身体が比例する。台詞を使わない為、ショットとモンタージュで理解を促すわけだが、それがどこも巧み。カットインのお手本のような使い方ばかり。象徴としてのドアマンの制服も、没収された制服を盗んだらボタンが取れてるのも上手い。あと、仕事クビになった父親が毎朝スーツ着て出社するフリするみたいな痛々しさって普遍的なんだな。『最後の人』から『トウキョウソナタ』に至るまで変わんない。撮影はどこも凄い。カメラワークでビックリしたのは、夢の場面で手持ちカメラやってるとこ。当時、手持ち出来るカメラなんてあったのか。目眩の表現方法も単純だけど常に的確。移動撮影はどれも流石。近所のババアたちに事情がバレて噂が一気に広まる場面もカメラがやたら元気でウケる。深夜のホテルに代表される光と影も最高。事実上のラストにあたる真っ暗なトイレも悲し過ぎて良い。文字通り「取って付けた」ハッピーエンドは切なかった。あれは便所で見た夢だから。
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