ダンクシー

救命艇のダンクシーのレビュー・感想・評価

救命艇(1944年製作の映画)
3.6
「ただナチは信用できん。付近に敵の潜水艦がいるのかも知れん。何か隠してる。こいつの意見は信用できない。そうだろ?」

密室のワンシチュエーションだが、反戦を謳ったストーリーという訳ではなく、人間ドラマがメインのストーリーだった。
ドイツのUボートに沈没させられた貨物船の救命艇に助け求め次々現れる人々。しかし最後に乗り込んできたのは、敵であるドイツ人だった…という話。
いわゆる、ナチ(ドイツ人)を信用していいのか否かで対立し争う訳ですが、奇妙にもドイツ人が航海に詳しかったのが肝で。最初は戦争捕虜だったドイツ人が、いつの間にか船のリーダーになるという過程を描きつつ、ドイツ人の非道さが描かれる。戦時中が舞台なので、その時の心理描写が強く反映された仕上がりになっている。
ドイツ人が裏切るのか裏切らないのか、目論見が中々分からないのが緊張感溢れる作りになっている。

「バミューダに向かってる時に前方に火星があった。今は右に見える。正面が金星だ。金星は東の方角だ。この船はバミューダに向かってない」

それぞれのキャラクターの描き分けは勿論のことだが、物語が進んでいくごとに記者のコニーが持ち物をどんどん失っていくのが面白い。救命艇で起きる出来事や関係性・心情・状況の変化とリンクして描くという遊び心、面白い。嵐に遭うシーンも、迫力が凄まじかった。どうやって撮ったのか気になるなー。

ただ、ドイツ人を悪として描くのは時代背景を考えたら仕方ないと思う反面、ちょっと安易だよなぁと思った。その奥にあるテーマに目を向けて描いた方が名作になったかもしれませんね。
あと、ちょっと思ってたのと違ったなーって感じ。もっと嘘とか裏切りが交錯するのかなぁって思ってたけど、まぁそんな分かりきったエンタメを撮るわけないか。
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