Sari

ルートヴィヒ 完全復元版のSariのネタバレレビュー・内容・結末

ルートヴィヒ 完全復元版(1972年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

2021/07/06〜2021/07/07
WOWOWプラス(録画)

『地獄に堕ちた勇者ども』『ベニスに死す』と並ぶ「ドイツ三部作」の最終作。
2日間に分けて鑑賞。

19世紀に実在したルートヴィヒ2世(エルン王)は、公務より芸術に心酔し、作曲家ワーグナーを呼び寄せたうえに住まわせたりと、浪費家で悪名高き人物だったと本作で初めて知った。    

即位から死までを史実に沿った形で描く歴史大作と銘打たれるが、王室内部の描写に特化し、民衆に対する公務は一切描かれていないルートヴィヒの退廃に振り切った、ヴィスコンティ・ワールド。
全編実在する城でのロケ撮影にて、本物の内装や家具や丁度品がとにかく異次元に圧巻でした。
セットを一切使わず、又本作のロケ撮影中に病に倒れながら、過酷なリハビリを行い、完成させたヴィスコンティの執念が伝わってくる。

ルートヴィヒを演じたヘルムート・バーガーの前半での美しさから、後半の変わり果て様は、実在のルートヴィヒ王に似せた髪型や、青白い顔に黒い歯のメイクで成り立っており、ヴィスコンティの期待に沿えようとなかなかの熱演ぶりだ。
だが、バーガー独特の高いトーンの声が、晩年になっても変化しないので、少々迫力には乏しいと思ったが、あの失われない妖しく儚い美が、ヴィスコンティの世界には不可欠なのだと思う。

エンドロールで、ロミー・シュナイダーの名前のみ□で囲ってあったので彼女は特別ゲスト扱いだったのだろうか?ルートヴィヒの従姉にあたるエリーザベトを演じた彼女とヘルムート・バーガーふたりのシーンや、
真黒なドレスでルートヴィヒ王の城を訪問する時のショットが素晴らしかった。
オットー1世役のジョン・モルダー=ブラウンはスコリモフスキの『早春』以外で初めて見たが、貴公子が似合う顔立ちで美しい。

合間にルートヴィヒの関係者達からの証言を挟み区切られて物語が進む構成なので、4時間という長さながらも、凡長な印象にならないところが流石。
Sari

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