いかちき

ルートヴィヒ 完全復元版のいかちきのネタバレレビュー・内容・結末

ルートヴィヒ 完全復元版(1972年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ルートヴィヒ完全復刻版はルートヴィヒ/神々の黄昏より1時間も長い。
神々の黄昏も長くてしんどかったのに。

というわけで、ヴィスコンティ監督作品「地獄に堕ちた勇者ども」「ベニスに死す」と並ぶ「ドイツ三部作」の最終作で、バイエルン王ルートヴィヒ2世の即位から死までを描いている。
ルートヴィヒを演じるのはヘルムート・バーガー。さすがに即位するシーンは18歳には見えないけど、理知的で神経質な新王をみごとに演じている。
オットー1世役のジョン・モルダー・ブラウンが初々しい。
いとこでオーストリア皇后エリーザベト役のロミー・シュナイダーも美しい。
でもとにかくヘルムートが圧巻で圧勝。
決して上手い俳優というわけではないのに存在感がずば抜けている。
痩せて青白いのに女性的ではなく男優として美しい。
と思ったけどセリフがイタリア語なんだと気づいてググったら吹き替えのイタリア語版しかないのね。ドイツが舞台なのに「セニョール」とか言ってて違和感半端ない。
気づいてからは観るのがちょっとつらかった。

ルートヴィヒの生活は全てが豪華絢爛で神経質なまでに繊細。そしてオタクだ。
ワーグナーへの執着心、エリーザベトへの思慕、反して戦争は嫌で国務も疎か。そして芸術のために国庫から浪費する。
「狂王」と呼ばれたそうだけど生まれる場所と時代をまちがえたね。
孤独へと追い込まれていくヘルムートの演技がすさまじい。
髪の毛とか眉毛を抜いたという逸話がなかったっけ?もしかしたら奥歯も抜いているかも。ヴィスコンティがそんなことやらせないか。いや、やらせるか。
とにかく鬼気迫る。
もはやルートヴィヒなのかヘルムートなのか分からなくなる。

ところで、神々の黄昏でルートヴィヒ周辺の人々の証言はあったっけ?オットーの病院に面会に行くシーンは?
それから森のでっかいログハウスの木の上や根本にすずなりの全裸や半裸の男たちのシーンもなかったような気がする。あれはちょっとやりすぎ。
そういう猥雑さが漏れるところがヴィスコンティの気持ち悪さだなぁと思った。
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