ジロ

神聖なる一族24人の娘たちのジロのレビュー・感想・評価

神聖なる一族24人の娘たち(2012年製作の映画)
4.5
スゴイ映画を観てしまった。
マリ・エル共和国の牧地マリ人をモデルにした小話集。24人の娘たち(老いも若きも「娘」ね)の話がコーヒーアンドシガレッツのように次々と語られます。短いものはほんの数十秒で終わるのだけど、どれもこれもが素晴らしい。
夢と現実の境目のような、でも必要以上にファンタジーではなくて、きっとマリ・エル共和国という国は本当にこんな世界なんじゃないかと思わせられる。
森の妖精に夫を差し出すよう言われて、断ったら夫に膣を触られるたびにイシチドリの鳴き声がするようになってしまった…という話が切なくて大好き。最後のオルゴールが流れるカットは心が締め付けられる。切ないのに、どうしてこんなにもファンタジーで、寓話的なんだろうか。
ゾンビネタが多かったりブラックコメディもチラホラ。キセリパーティで登場するスーツをビシッとキメたイケメンたちは、確実にこの世のものではない感じがしてめちゃくちゃコワイ。生と死と、あと性と。
エロさはカケラもないけれど単純にセックスの話が多い。
バグパイプを買ってきて、ご飯になっても無視してずっと吹き続ける夫。
バケツいっぱいのキノコを品定めして「こんな人と結婚したいわ」という少女。
初潮のおとずれを大きな笛を吹いて知らせなくてはいけない少女。
夫を殺してしまう妊婦。
孫の呪いを解いてもらうため、ガチョウを持って森へ行くが断られてしまう老婆。
キセリパーティで全裸で踊る女性たち。
ここにはマリ人たちの生活が、文化がある。
音楽もとても良かったし、みんな衣装がカワイイ!向こうの民族衣装は鮮やかで綺麗だなあ。

全体に漂うヘンテコなロシア感。でもマリ語はフィン・ウゴル系のせいか、言葉の響きはロシアよりもフィンランド系。
ロイ・アンダーソンの作品が好きな人は気に入るはず。
もしくは怒られそうだけど、ロシア版(マリ版)「エコール」って感じかね。
DVD化されたらぜひ手元に置いておきたい作品。
久々にパンフレット買ってしまった。ビジュアルブックも欲しかったが5400円…

(しかし、どこの国も共通で田舎にはセックスしかないんだろうか。。)

ユジク阿佐ヶ谷にて
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