爆裂BOX

ルチオ・フルチのクロックの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

ルチオ・フルチのクロック(1989年製作の映画)
3.4
片田舎のとある屋敷に押し入り、そこに住む老夫婦を殺害した三人の男女。しかし、何時の間にか屋敷内の時計が逆回転し、死んだはずの者達が蘇り始める…というストーリー。
ルチオ・フルチがウンベルト・レンツィと呪われた屋敷をテーマに競作したTVシリーズ「LA CASE MALEDETTE」の一本です。
老夫婦の住む屋敷に三人の男女が強盗に押し入るも、金品だけを奪って殺しはしないはずが、庭師の男の抵抗により老夫婦と共に殺してしまう。外には凶暴なドーベルマンが放し飼いにされて屋敷から逃げることもできなくなった彼らはやむなく館で一夜を明かすことにするが、屋敷中に飾られた時計の針が逆回転を始め、時間が逆戻りして蘇った老夫婦と庭師が彼らに襲い掛かる、という内容です。
呪われた屋敷テーマであると同時に老人の住む家に若者達が強盗に入ったらヤバい家だった!という「ドント・ブリーズ」みたいな返り討ちホラーでもありますね。
この館に住む老夫婦がまずヤバいですね。一見、穏やかな老夫婦という感じですが財産狙った甥と姪を殺して礼拝堂に腐りかけの死体安置しており、その事知った家政婦も口封じに殺して埋めたりと開始早々キチっぷりを披露してます。お爺さんの方は時計に子供の様に愛情かけて家中に飾ってますし、窓辺に来る小鳥を叩き殺して飼い猫のエサにする残酷さも見せます。片目の庭師の男は黙々とこの夫婦に従います。
その屋敷に強盗に押し入る男女三人も、店で万引きしたり車に入り込んでた黒猫をビニール袋に詰めて窒息死させたりするろくでなしどもです。どちらも悪で前半老夫婦、後半若者達と同じ分量で描かれるのでどちらが主人公かなかなかわかりません。若者達の方かな?
老夫婦と庭師を殺した瞬間に屋敷中の時計が止まって、針が逆回転初めて死者が蘇りますが、何故こんな現象が起きたかの説明は一切ないです。老人は自分が時計に愛情注いだからだと思ってましたが…死者が蘇るといってもいつものフルチ映画の様に腐り果てたゾンビではなく、生きてた時の状態に戻るので生きてた時と同じ姿で生きてた時と同じく生活できます。メイドが土中から腕ニョッキリ出す所はゾンビっぽかったかな。
三人が屋敷に泊まらざるを得なくなってから屋敷で不気味な物音や気配感じて怯えて行ったりしますが、コケオドシ的な感じで全然怖くないですし、間延び感あるのも辛いですね。老夫婦たちが現れても上記の様に生前のままなので怖さないですし。
残酷描写もTV映画とあってか随分大人しめ。それでも、木杭突き刺された腹から内蔵零れ落ちる所をキメのショットで捉えたシーンはフルチらしさ感じます。というかTVで内臓出る所普通に流せるの凄いな。老婆が指輪盗んだヒロインの手に腕輪からシャキン!とナイフ出して刺す所はちょっと笑った。
ラストの展開は意外で面白かったですね。老人たちの為に時間が戻ったのかと思ったら…あそこからの殺そうと追い詰めてた方が逆に殺される展開も面白かったですし、ここから夢オチで終わるかと思ったら若者達も因果応報の末路辿る所も面白かったですね。あの黒猫が伏線になってるとは。でもあの猫も車から放り出されて死んでて可哀想でした。でもまだ時間戻ってたけどどこまで戻るんだろ…?
全盛期と比べると地味で小粒な作品ですが、アイディアやラストの展開は悪くない作品だと思います。