マリオ・バーヴァによる文芸怪談ベースの3話オムニバス。ボリス・カーロフをナビゲーターに据える。
もっとも、「チェーホフ、トルストイ、モーパッサンの原作を脚色」とあるのはデタラメで、第2話がA.K.トルストイ(「戦争と平和」などのレフ・トルストイとは別人のマイナー作家)作と推定され、それもかなり脚色している。チェーホフに至っては完全にねつ造である。
閑話休題。第1話「電話」は唯一現代劇となっており、ショート・ミステリという風情の導入話。第2話「ヴルダラク」は、バーヴァ自身の「血塗られた墓標」(1960)を彷彿とさせるスラヴ怪談。カーロフが吸血鬼役を演じている。第3話「水滴の音」がホラーとしては出色で、グロテスクな老婆の亡霊がよい。全体的にはややライトな作りであり、バーヴァの作品群のなかでは劣後する。
ラストには引きの映像でカーロフ自身が映画撮影しているシーンを入れ込み、フィクション性を強調する。観客に気を使っているようで滑稽味がある。