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サイコ3/怨霊の囁きの消費者のレビュー・感想・評価

サイコ3/怨霊の囁き(1986年製作の映画)
3.6
・ジャンル
サイコスリラー/ホラー/サスペンス/スラッシャー

・あらすじ
22年間の精神病院収容という形で禁固刑を終え心神喪失により無罪放免となったかつての殺人犯ノーマン
その後、暗躍する女性達に悩まされ思いがけない人物による連続殺人によって彼は再び亡き母の幻影に取り憑かれてしまった
それでも狂気を抑えてきた彼だったが1人の女性との出会いが全てを狂わせてしまう
モーリーンという名の教会を追われた元修道女である
彼女は22年前、ノーマンが手に掛けたマリオンに良く似た女性だった
そして再び起こり始める殺人事件
殺めた実母を追い付き纏う記者のトレイシーとそれに裏で共謀するバイトのドゥウェイン…
頭を悩ませる出来事が裏で相次ぐ中、モーリーンとの親睦によって彼はどうにか正気を保とうと母の幻影と格闘するのだが…

・感想
ロバート・ブロックの同名小説を原作に鬼才アルフレッド・ヒッチコックが手掛けた一作目を皮切りにシリーズ化された「サイコ」の3作目
今作は原作に無いオリジナルエピソードであり監督を主人公ノーマンを演じるアンソニー・パーキンス自ら務めている

母の幻影に囚われ連続殺人を犯す様を描いた1作目
更生に努める中で被害者遺族の謀略に巻き込まれ思わぬ人物が殺人を繰り広げた2作目
そして3作目にあたる今作では母の幻影と拮抗しながら新たな容疑を追う者と理解者に出会い苦しむ姿が軸となっている

かつての連続殺人犯のその後というテーマに前作で移ってから取り上げる題材としてはバッチリでアンソニー・パーキンスの怪演や幻影と疑念を散りばめたストーリーも悪くはない
しかしどうも過去作と比べて安っぽく感じてしまうのは重要な要素への踏み込みが足らないからだろう

半ばレイプ未遂に近い形でドゥウェインにセックスを迫られ拒んだ事で車から放り出されたモーリーン
更に遡り信仰と性欲の間で揺れる彼女の心
金の為にスパイとなるドゥウェインと彼を雇う記者トレイシー
過去の事件を知りながらも更生を信じる周囲の人々
それぞれの要素は悪くないのにそこには生々しさがいかんせん欠けていて前作までの様な起承転結の美しさもやや弱い
光る部分が随所にあるだけに惜しい作品だった様に思う

主役自らがメガホンを取ったにしては良く出来ている方だろうし駄作とまでは言わない
それでも前作までの重厚感を思えば勿体無いというのは否めず…
アンソニー・パーキンスはハマり役だからこそもっと丁重に製作に取り掛かって欲しかったかなぁ
前科者と世間、似た過去を持つ男女の恋愛、マスコミや共謀する者の汚さ
それらを丹念に描く為にはやっぱり監督や脚本専業の人間に任せた方が良かったんじゃないかと…

またゴア描写推しの作品ではないとはいえそれなりに惨いシーンも前作では僅かながらあったのに対してそちらも今作は弱い
製氷機とか遺体損壊のシーンは良かったけどグロいかというとそうでもないし…
まぁホラー/スラッシャーのシリーズ作品において3作目っていうのはやっぱり難しいんだなぁというのが正直な感想
何と言うか全体的に凡庸なんだよな…
ラストは良かったんだけどね…
その手前のトレイシーが明かす真実はともかくとして…

オリジナルシリーズは次の4作目でラスト
1作目で脚本を務めたジョセフ・ステファノが復帰しているので期待したいところだけどどうなんだろう…
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