このレビューはネタバレを含みます
人類の文化遺産にしていい作品では
特撮の神様レイ・ハリーハウゼンの古い映画を観たくて、初めてしっかり観ました
非常に良かったです
本作はSFの父ジュール・ヴェルヌの原作「神秘の島」(1874年発表)を原作とし、「海底二万里」(1869年発表)の続編らしい。
1961年(昭和36年)公開のイギリス・アメリカの合作映画ですが、内容が、いきなりアメリカ南北戦争の最中1865年なので、びっくりしました
しかし主人公のナレーションで過去を振り返る形の展開で、こういう構成は好きです
全体を通じて、やはりストーリーとメッセージがしっかりしていたので、素晴らしかったです
幾つも伏線が張られていて、後半のネオ艦長の登場を盛り上げています
音楽も実に感動的で、たいへん素晴らしい出来栄えです
ただ特撮は、まだまだこの時期の技術のレベルなのか「別写し」がはっきりわかってしまい、風景に人物の影が映ったり、巨大生物の色合いが背景とマッチしていなかったり、違和感はありますが、仕方ありません
それでも「謎の島」での火山や原始的な風景は、人物の背景に絵で書いたようではありますが、それでも素晴らしい出来栄えでした
それよりも何よりも脚本が素晴らしいのは、
本作の主題がズバリ「戦争反対」であるからです
ネモ艦長のセリフも全編、非常に含蓄があり、
この主題についても
「戦争を不必要にするために私は全力を尽くしてきた」
「戦争は破壊と殺人を美化している」
「全人類に十分な食糧を供給するため」巨大生物を作った
「これなら戦争の原因である飢餓や経済競争をなくせる」
「考えてみたまえ。40フィートの小麦・・・牛ほどの羊・・・」
「この研究成果を文明世界に届ければ私の使命は終わる」
このような使命感でネモ艦長は、漂流した主人公たちを助け、
最期も彼らを救って自分は島の火山活動の犠牲になる
ラストシーン
救われた主人公がつぶやくセリフ
「艦長は戦争を根絶しようとした。彼の偉大な遺志を継いで平和のために全力を尽くそう。我々は固く誓った。」
そしてTHE END
本作の製作時期1961年の頃とは、どのような時代であったのか?
1945年、第2次世界大戦が終わり、米ソの「冷たい戦争」が始まった
それはソ連のスターリンが死去した1955年から一旦、「雪どけ」の時代を迎えたが、1958年から再び、「危機の時代」となり、核兵器開発と宇宙開発競争の時代となっている
1958年ベルリン危機
1950年代の中台戦争
1960年5月のソ連による米U-2偵察機撃墜と、その影響を受けた米ソ首脳会談の中止
このようなキナ臭い世界情勢の中で
二度と先の大戦のような悲劇は繰り返さない
という強い平和への願いから
本作は作られたのであろう
今のキナ臭い日本にも
このような平和を希求する映画がほしい
もっと国民みんなが
大きく声を上げるべきだ
戦争反対!と