TOMJFK

SF巨大生物の島のTOMJFKのネタバレレビュー・内容・結末

SF巨大生物の島(1961年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

人類の文化遺産にしていい作品では

特撮の神様レイ・ハリーハウゼンの古い映画を観たくて、初めてしっかり観ました

非常に良かったです

本作はSFの父ジュール・ヴェルヌの原作「神秘の島」(1874年発表)を原作とし、「海底二万里」(1869年発表)の続編らしい。

1961年(昭和36年)公開のイギリス・アメリカの合作映画ですが、内容が、いきなりアメリカ南北戦争の最中1865年なので、びっくりしました

しかし主人公のナレーションで過去を振り返る形の展開で、こういう構成は好きです

全体を通じて、やはりストーリーとメッセージがしっかりしていたので、素晴らしかったです
幾つも伏線が張られていて、後半のネオ艦長の登場を盛り上げています

音楽も実に感動的で、たいへん素晴らしい出来栄えです

ただ特撮は、まだまだこの時期の技術のレベルなのか「別写し」がはっきりわかってしまい、風景に人物の影が映ったり、巨大生物の色合いが背景とマッチしていなかったり、違和感はありますが、仕方ありません

それでも「謎の島」での火山や原始的な風景は、人物の背景に絵で書いたようではありますが、それでも素晴らしい出来栄えでした

それよりも何よりも脚本が素晴らしいのは、
本作の主題がズバリ「戦争反対」であるからです
ネモ艦長のセリフも全編、非常に含蓄があり、
この主題についても

「戦争を不必要にするために私は全力を尽くしてきた」

「戦争は破壊と殺人を美化している」

「全人類に十分な食糧を供給するため」巨大生物を作った
「これなら戦争の原因である飢餓や経済競争をなくせる」

「考えてみたまえ。40フィートの小麦・・・牛ほどの羊・・・」
「この研究成果を文明世界に届ければ私の使命は終わる」

このような使命感でネモ艦長は、漂流した主人公たちを助け、
最期も彼らを救って自分は島の火山活動の犠牲になる

ラストシーン
救われた主人公がつぶやくセリフ
「艦長は戦争を根絶しようとした。彼の偉大な遺志を継いで平和のために全力を尽くそう。我々は固く誓った。」
そしてTHE END


本作の製作時期1961年の頃とは、どのような時代であったのか?

1945年、第2次世界大戦が終わり、米ソの「冷たい戦争」が始まった

それはソ連のスターリンが死去した1955年から一旦、「雪どけ」の時代を迎えたが、1958年から再び、「危機の時代」となり、核兵器開発と宇宙開発競争の時代となっている

1958年ベルリン危機
1950年代の中台戦争
1960年5月のソ連による米U-2偵察機撃墜と、その影響を受けた米ソ首脳会談の中止

このようなキナ臭い世界情勢の中で
二度と先の大戦のような悲劇は繰り返さない
という強い平和への願いから
本作は作られたのであろう

今のキナ臭い日本にも
このような平和を希求する映画がほしい

もっと国民みんなが
大きく声を上げるべきだ

戦争反対!と
TOMJFK

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