爆裂BOX

吸血鬼ハンターの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

吸血鬼ハンター(1973年製作の映画)
3.8
かつて軍隊の一員として戦っている間に母と妹を吸血鬼に奪われたキャプテン・クロノス。復讐の為吸血鬼ハンターとなった彼は、ある村へとたどり着く…というストーリー。
ハマー・フィルムが贈る、吸血鬼映画にチャンバラなどの活劇要素をプラスした異色の吸血鬼映画です。
その村では若い娘が一瞬にして老婆になって死亡するという怪事件が続発していた。かつての戦友で今は村の医師をしているマーカスの頼みを受け、クロノスと相棒のグロスト教授、さらし者になっていた所を助けたジプシー娘と共に吸血鬼の正体を突き止めようとするが、という内容です。
ハマーがシリーズ化を目論んで製作した活劇要素加味された吸血鬼映画ですが、吸血鬼ハンターを生業にした主人公という点では、「ブレイド」等のヴァンパイアスレイヤー物の原点ともいえる作品ですね。菊地秀行氏の「吸血鬼ハンターD」も本作からインスピレーションを得ているそうです。
戦争に出征中に母と妹を吸血鬼にされたクロノスは復讐のため吸血鬼を追う吸血鬼ハンターとなりましたが、武器として使うのがサーベルと日本刀というのが面白いですね。立ち寄った酒場で相棒のグロストを「猫背」とバカにしてきたゴロツキ三人をたちどころにまとめて日本刀で一刀両断する所は西部劇要素と侍っぽさを合わせた感じで面白かったですね。墓地で襲撃してきた村人達を二刀流で武器だけ叩き落す所のアクションはちょっとモッタリした感じだったけど。日本刀使うのは監督が黒澤明の大ファンだからだそうで。
相棒のグロスト教授(自称)も、傴僂であることバカにされて落ち込むけど、クロノス達に励まされて「神は良い友人をくれた」という所等微笑ましくて良かったですね。基本的にコメディリリーフ的な立ち位置だけど、吸血鬼に関する知識や最後の戦いでのアシストなど相棒としてもしっかり役立っている所も良いですね。
さらし者にされていた所を助けられてクロノス達と同行するジプシー娘を演じたキャロライン・マンローのセクシー具合も良かったですね。クロノスとのラブシーンでの見えそうで見えない感じも良い。
本作の吸血鬼は血を吸うというよりもオド(生命エネルギー)を吸い取る吸血鬼ですね。基本的に犠牲者を襲う時は、犠牲者の顔アップ→黒い影が覆いかぶさり悲鳴が→第三者が老婆になった犠牲者を発見する、という具合です。吸血鬼が通った後に花々が萎れてしまう演出もエネルギーを吸い取っているんだなと分りやすくて良いですね。太陽光の下でも平気で移動できます。蝙蝠が顔に飛びついて血塗れになって悲鳴を上げる美女のシーンは唯一のショックシーンかも。終盤になるまで吸血鬼の正体を謎のまま進む構成も面白いですね。
吸血鬼になった戦友が「殺してくれ」と頼み込んでそれを聞き入れるも、胸刺しても死なず、首吊っても火を近づけても死なないので悪戦苦闘するシーンは妙なコミカルさ感じました。
十字架を鍛造して最強の剣を作る所も漫画的で面白いです。
終盤明らかになる吸血鬼の正体は「やっぱりね…」と思いましたね。あの人は露骨に怪しく描いてたから違うだろうなと思ってた。吸血鬼として蘇った「伝説の剣豪」とクロノスのチャンバラ合戦も展開的に熱くて見応えありました。「バンパイア・ラヴァーズ」を始めとしたハマーがレ・ファニュの「カーミラ」を映画化した一連の作品とも関連性があるようですね。
ヒロインに別れを告げて新たな旅に出るクロノスとグロストを描いたラストも西部劇的ですね。
ゴロツキをけしかけた貴族や吸血鬼化した妹に噛まれても吸血鬼にならなかったクロノスの特性や、母と妹を奪った吸血鬼などがほったらかしなのはシリーズ化見込んでいたからか。
残念ながら興行的に振るわずにこれ一作で終わりましたが、チャンバラ活劇を盛り込んだ吸血鬼映画で、今見てもテンポ良い楽しい作品でした。