ジョニー・トー成分の結晶化──FILMeX2024プレ。観光客を狙って財布を盗む男4人のスリチームが麗しい女スリに心と所持品を盗まれて、彼女を救い出すためにラスボスのスリと対決する。「細かいところはこれから詰めていこう」みたいなプロットなんだけど、この作品、細かいところが詰められたりはしない。こういう設定なんですドーンでザッツオールなのである。女スリとラスボス爺がどんな関係だったのかはよくわからないし、キーアイテムとなるネックレスやパスポートとかも完全にただのマクガフィン。そこが良かった。逆に良かった。擁護するための逆に良いじゃなくて本当に逆に良いやつだった。
他のジョニー・トー作品と比較して、台詞がとても少ない。基本的にショットの繋ぎで語る。ジョニー印のシネスコ画面はいつにもましてキレキレだ。その証拠としてかはわからんけど、任達華(サイモン・ヤム)がフィルムカメラで写真を撮影(shoot)したりもする。奇抜な形状の吹き抜けを有する螺旋階段もちゃんと登場。骨組みだけの設定の上で、常連俳優の男たちがこれまたジョニー印の至って真剣見ていて滑稽な団体戦を繰り広げる。本作、抽象化されたジョニー・トー、概念としてのジョニー・トー、結晶化させたジョニー・トー成分みたいな作品なのだ。コアなファンに向けて作られた映画なのかと思ったよ。ジョニー・トー好きとして大いに楽しみました。
今週、「終わらない仕事を明日に回して退勤→ヒュートラ有楽町に駆け込む→FILMeXプレ観る→飲食店が閉まってるから吉野家食べる→寝る→早起きして前日残した仕事を片付ける」のサイクルから抜け出せない気がしてきた。睡眠負債が溜まる一方だよー。