荻昌弘の映画評論

鐘の鳴る丘 第三篇 クロの巻の荻昌弘の映画評論のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

 原放送劇は五百回を越して今なお放送をつづけているのだという。その事実さえ知らないぼくにはこの映画と原作の関係は全然見当もつかないが、また依然として浮浪児の幸福を願って努力されている原作者菊田氏及びこ映画のスタッフに新たな敬意をおぼえることも出来る訳である。
 今浮浪児の問題は浮気なジャアナリズムやぼくらの視野から脱落して行く傾向にある。こういう不人情なぼくらに毎年一回ほど、まだまだ世の中には不幸な子供達が沢山残って居り、彼らを救うために純真な美男美女達が無道なボスや深刻な経済事情と闘いながら献身的な努力をつづけているという物語を鐘を鳴らしながらしていただけることは有難い功徳と言わねばならぬ。その物語がプリミティヴなルウティンにみち、語り方またせわしないラフさでつらぬかれているにしても。
 この作品から感じられる善意や誠実さは、一般の子供達にも、幸福とは野球や象見物以外自分らの父母と共に生活することにも存在するということを教え込むだろう。
『映画評論 7(1)』