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ヒッチ・ハイカーのaliceのレビュー・感想・評価

ヒッチ・ハイカー(1953年製作の映画)
4.5
ひっきりなしに繰り返されるドアの開閉。
ただ一つの場面を除いて登場人物は走らないし、(車が主題であるのに)速度感がまるでない。
最終盤の逮捕劇も、ショットの簡潔さとは裏腹に、ややゆったりした気味悪い場面が続く。
二人の無防備な男に銃を突きつけてきた男が、最後には警官二人に銃を向けれられて捕らえられる。

とくにシネフィルというわけでもないので、車と狂人というところから想起されるのはタランティーノの『デスプルーフ』くらいなのだが、そちらと比べると疾走感が前景には出てこず、陰鬱な場面が続く印象。
冒頭、「銃はこの男のものだが、車はあなたのものかもしれない」とされるように、「車」とそれにのった二人については特異な描きかたが避けられている。傑作。

ただ、(素晴らしい造形がなされている)悪役も、それがただの「狂人」ではなく、障害のせいで社会に馴染めないアウトサイダーとして表象されている点には若干ガッカリする。(『ジョーカー』やヒッチコックの『サイコ』を見た時にも思ったが)なぜわざわざ「狂人」を、誰もが理解できる解釈のコードに沿わせてしまうのだろうか。なるほど、彼は狂人です、しかしそれはこれこれの理由によります、と説明ができないと怖いからだろうか。この点は非常に浅薄に思える。「狂人」は、誰にも理解できないヤバいやつとして描いてくれた方がいいんだけどな、個人的には。
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