柏エシディシ

フェイズ IV/戦慄!昆虫パニックの柏エシディシのレビュー・感想・評価

3.0
いきものシリーズ。アリ編。
5月8日はグラフィックデザインの神様ソール・バスの誕生日。円盤を引っ張り出して鑑賞。
アイコニックなタイトルデザインや「サイコ」のシャワーシーンなど、伝説的な映画仕事の中でも異彩を放つ天才の、唯一の劇映画監督作。
町山智浩さん「トラウマ映画館」を読み、その後WOWOWの放送で鑑賞以来、お気に入りの一本。

時代性もあって少し今の目で観るといなたいルックスだし、限られたロケーション最小限のキャストで、スケールがどうしても小さく見えてしまうが、その着眼点とSF設定は今なお刺激的。
初期ウルトラ作品に通じるSFスリラー感が不気味で良い。
肉眼では捉えられないウィルスの流行で世界中の社会システムが3年近くも混乱するのだから、この物語の説得力と先進性は無視出来ないものではないだろうか。
そして、何度観ても驚嘆する「演技する蟻たち」
今なら、普通にCGにしてしまうだろうし、そもそも蟻なんてビジュアル的にミニマルなものをピックアップしないだろう。
それだけに、もう観れない映像としてもユニーク。
観ているうちに無表情(?)な蟻たちの声や感情が聞こえ、見えてくる気になってくる演出が凄い。
そして、ヒロインのリン・フレデリックの美少女ぶりも眩しい。
仮面ペルソナを思わせる蟻の影が掛かるアップのショットや、神秘的で且つエロティックな「砂の中のオフィーリア」など、ビジュアリストとしてのソール・バスの天才の技も、彼女の美しさを際立たせる。

ソール・バスもこれ以外には映画を撮っておらず、なんとなくだけれど、出来映えには不満や撮影のストレスがあったのではないだろうか。
若しくは、納得していたから他に撮っていないのかもしれないな。
なーんてことを観る度に思うし、今でも見かけることのあるソール・バスのお仕事を観るたびに、ついつい「…蟻……」と考えちゃう自分がいる
柏エシディシ

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