美しい。でもとても深くて辛く哀しい。
人間の業や矛盾を見せつけられ身動きが出来なくなる自分がいた。
森にシシ神が現れるシーンの神々しさは今も熱く胸によみがえる。
光と命に溢れた世界。
アニメでこのような表現ができるとは!
このスケール感は映画館で観てこそだと、後にTV放送などをみてそう思った。
本当に、シシ神の《力》に満たされたように感じたのだ。
そしてまがまがしいダイダラボッチの魔の力が人々を飲み込むのを、息もできずに見守っていた。
メッセージはストーリーだけで伝わる訳ではない。
映像と音楽。
その方が能弁なこともあるだろう。
紛れもない人間批判。
宮崎監督のメッセージは「もののけ姫」で最強のパワーをもった。
だれもが理屈で無く思うはずだ。
人間は自然を屈服させることはできないのだと。
それでも人は自然と対抗して生きるという選択をしたのだ。
数万年前に。
「それでもいい。共に生きよう」
アシタカがサンに言えるのはそれだけだ。それが唯一の回答だから。
もしも人類が自然を凌駕しえたとすれば、その時地球は終わるだろう。
すべて手書きのセル画にこだわったジブリがCGを一部導入した最初の作品だったと思う。
映像の迫力には圧倒され、妥協のなさを見せつけた作品でもあった。
一方で「ジブリらしさ」を偏愛する人には受け入れがたい作品でもあったらしい。
笑えないとか、キャラが立っていないとか、ハッピーじゃないとか、ね。
そういう「ファン」はジブリのファンであって、きっと映画ファンではないのだろう。
このような大きなテーマやスケール感やもやもや感や人間の本質やらを表現する映画はいくらでもある。
アニメでやってはいけないって法はない。
アニメ専属声優お約束の抑揚過剰な喋りもない。
一つ抜けたアニメ映画だと思う。
【映画の舞台】
モロ一族の棲家やシシ神の森は主に屋久島が、アシタカが生まれ育ったエミシの里は、白神山地モデルといわれています。
屋久島の「白谷雲水峡」は美しい渓流と何百種類の苔に覆われた深い緑の森です。
推定樹齢3000年の弥生杉などの太い屋久杉やさまざまな種類の照葉樹が生い茂り、
至る所に見事な滝が見られます。
「白谷雲水峡」には、「もののけ姫の森」と名付けられているポイントがあります。
ことに標高1050メートルの太鼓岩と、辻峠を下った辻の岩屋は、モロ一族の住む岩屋のモデルです。