「スリーパー」(1973)に続き、ウディが一貫したシナリオで製作した歴史モノコメディ。ナポレオン戦争下のロシアを舞台に、度胸がなく神経質なウディが兵卒として駆り出され、たまたま戦功をあげて想いを寄せていたダイアン・キートンと結婚する。ナポレオンの再侵攻を機に、2人はフランス皇帝の暗殺を企む…という筋書き。
次作「アニー・ホール」(1977)でウディはコメディ偏重から転機を迎えるが、本作はダイアン・キートンとの共演コメディとしては最高の出来である。ロシア文学の実存主義的側面を取り入れた脚本もキートンとの掛け合いも傑作である。
ウディ扮するボリスは決して殺人を犯そうとしないが、それは神の命ずるところではなく、あくまで人間の道徳観からの誓いである。ウディ流に茶化しながらも、彼の神への懐疑と後に「重罪と軽罪」(1989)のライトモチーフになる「罪」の問題をすでに胚胎しているのも興味深い(47/50)。