カタパルトスープレックス

くちづけのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

くちづけ(1957年製作の映画)
3.8
日本映画に新風を巻き起こした大天才(と同時に大いなる器用貧乏)、増村保造監督の最初の監督作品です。

イタリアに二年間留学をしてみっちりと映画を体系的に学んできた増村保造。イタリア留学期間中に「生きるとは」をよく考えたそうです。日本的な「人間」は他者との関係に求めます。しかし、イタリアでの「人間」は圧倒的な個人。これまでの日本映画の巨匠の黒澤、小津、溝口、成瀬の映画作品はその手法こそ革新的でしたが、精神的にはウェットで日本的な部分を多く残していました。これを刷新したのが増村保造です。

イタリアから帰国後、二年間は溝口健二監督と市川崑監督について助監督をしました。その後に与えられた作品が本作『くちづけ』でした。原作は主演の川口浩の父親でもある川口正太郎(溝口健二の同級生で大映の専務)によるメロドラマ。まあ、相当にウェットな作品だったようです。くさる増村保造に市川崑は「新人監督がデビューする時、完璧な条件を揃えてくれるはずがない。どんな材料でも自分流に料理すればいい」とアドバイスをくれたそうです。

ストーリーは非常に単純。偶然出会った若い二人(川口浩と野添ひとみ:のちに二人は実際に結婚します!)が「くちづけ」するまでの二日間です。メロドラマですがかなりテンポがよくドライブ感があります。いまのボク達でも「ああ、いいなあ。こんな恋愛したいなあ」と思える爽やかさ。そして、お互いの親との関係は(当時の基準からすれば)ドライです。その象徴が宝石商として成功してる欽一(川口浩)の母親ですね。

なお、ここからは豆知識。欽一(川口浩)の母親は三益愛子が演じているのですが、川口浩の実の母親です!父親原作、後の妻+母親と共演!川口ファミリー映画と言っても過言ではありません。リアルファミリードラマ!そりゃ、ラストでお母さんはそういう行動に出ますよ!むしろ、川口家が仕込んだ壮大なお見合い?😂😂😂そういう見方をしても面白い映画だったりもします😂