半兵衛

血まみれギャングママの半兵衛のレビュー・感想・評価

血まみれギャングママ(1970年製作の映画)
3.5
息子たちを近親相姦すれすれの愛情で縛り付け、犯罪行為にひた走るリーダー格の母親を演じるシェリー・ウィンタースの貫禄あるゴッドマザーぶりがこの映画に多大な説得力を与えている。前半でのイケイケなリーダーぶりと後半の崩壊していく家族の絆のなかでどうすることもできず老いていく女性を両方とも無理なくナチュラルに演じる名演技も最高。

犯罪一家に「父親」が不在(いることはいるが、犯罪には加わらず別の場所で暮らしている)なことがこの映画に独特な味わいをもたらす。前半での家族の活躍っぷりに欠落した狂気を見るものに感じさせ、後半では父親としての要素を持つ人物との交流を通して家族がそれぞれ自分達のいびつな家族像に気づかされ母親=頂点というヒエラルキーが崩壊し各々が暴走していくドラマとして作動させる。

前半こそニューシネマのような作風だが、後半の一家の崩壊劇が他の作品にはない悲劇的な余韻を与える。ラストの銃撃戦も破滅というよりは自分達のどうしようもない業に気づいた一家のドラマが悲壮で物悲しい。

一家のドラマを中心にしているため犯罪シーンが少なめな印象だが、それでもやってることが滅茶苦茶なためインパクトをもたらす。銀行強盗から逃げる際に人質にした女性を車の外に出させ警察に撃たれないようにするのも狂っているし(案の定曲がり角で何人か脱落する)、中盤四男が知り合った女性を強引に家に連れ込んだことが発覚し一家が話し合いの末彼女を殺害する件もかなりぶっ飛んでいて怖い。

低予算映画の割には結構豪華な役者の面子が揃っているのも楽しい、あとデ・ニーロこの映画ではラリってばかりいた印象だが本当にやってたのね。
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