半兵衛

ボディ・スナッチャー/恐怖の街の半兵衛のレビュー・感想・評価

3.9
60年前の作品ゆえ古さは否めないが、それでも自分が少数派として孤立しているという集団で活動して進化してきた人間にとって最悪の恐怖が日常の中から小さな違和感が拡大してじわじわと責めてくる巧妙な語り口とシーゲル監督によるキレのいいアクション演出は古びておらず今なお見ごたえのある作品として輝いているのが凄い。

なかでも主人公がある行為で最愛の人の変化に気づかされる演出の表現が最悪なまでに素晴らしくて、主人公同様観客を絶望のどん底にまで叩き込む手腕に息を呑む。

謎のコピー人間の描写も時代ゆえか直接的な描写はないものの、コピーされた人間の感情が欠落した微妙な演技とさやいんげんのような殻から人間が出てくる嫌な映像によって嫌悪感を煽っていく演出が見事。

ラストがどう見ても蛇足にしか思えないのが難ではあるが、それでも愛する人間を救えなかった人物の無力感がにじみ出たラストカットは何とも言えない余韻があって捨てがたい。

それに『ススムちゃん大ショック』や『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』、『散歩する侵略者』(多分黒沢清監督のことだから本作をリスペクトしている可能性が高い)などといった後進の名作に多大な影響を与えたという意味でも偉大な作品と言える。
半兵衛

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