半兵衛

ザ・シャウト/さまよえる幻響の半兵衛のレビュー・感想・評価

2.6
変な映画という前評判を聞いて見たけれど、本当に変な映画だった。しかもこれでカンヌで賞をとれるなんて冗談としか思えない。

話は一言で言えば大声で動物や人を死なせ、雷を巻き起こせる特殊能力を持つ謎の男が音楽家である主人公の家に住み着き、やがて家を乗っ取っていくという物語。ただ実際問題声で人を殺せるというアイデアが先行した感じが強く、その能力が発揮されるシーンも「こんなところで?」と思ってしまう意味がわからないところで披露されており盛り上がりに欠ける(唯一警官を殺すくだりは納得したけれど、それでも意味なく別の警官に捕まっているし)。

そのうえ謎の男は見た目単なるおっさんで、こういう映画に必要な謎めいたカリスマ性や知性、ビジュアルを一切持っていないという潔さ。態度も尊大だし、話すことも単に気味悪いことしか言わない。サンドウィッチマンのコントでかつて富澤たけしがニートまがいのこじらせ男を演じた病んでる富沢シリーズというのがあったが、その富澤のキャラに近い。それでいて主人公の奥さんを洗脳し、寝とるのだからたちが悪い。

主人公が音楽家という設定も特に本編で有効活用されてるとは言いがたく、音楽家という設定から主人公が男の声に興味を持ち、調査をする内にある発見をする的な展開を期待するのだがそういうことは一切無い。何だったら主人公をサラリーマンにしてもこの話は成立している。…と欠点をあげればキリがない。そして最大の問題は一体作者がこの映画で何を伝えたいのかわからないということ。多分声で人を殺すところを撮りたかっただけなんだろうけど。

唯一好きなところは男が特殊な大声を発するところのカット割りかな、次々と羊が死んでいき、人も体調を崩すなど本当に殺人音波が発生しているような雰囲気が見事に出ていた。ただ最後に能力を発生するくだりはコントにしか見えない。
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