うかりシネマ

マルサの女のうかりシネマのネタバレレビュー・内容・結末

マルサの女(1987年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

税務署員(後に東京国税局査察部、マルサに異動)の板倉亮子と、巨額を脱税するラブホテル経営者・権藤との戦いを描く。

巧妙に隠された脱税はいくら調べても手がかりはなく、やくざを使って脅されるほどだった。熱心な張り込みや人力での気が遠くなるようなローラー、関係者への尾行などを地道に繰り返し、どうにか手がかりを掴む。
朝一番のガサ入れからは溜めた分、一転攻勢で爽快だが、直接対決になる分相手の守りの手も面白い。

主演の宮本信子は『タンポポ』の守りたくなる可愛さと打って変わって、強面の印象になっている。
業務中は血も涙もない亮子も、脱税をする権藤も、家族や子供に対して優しい二面性が描かれる。特に権藤は、それで何かが許されるわけではないが、人の善性が強調される。

「性」と「食」のモチーフは健在で、ラブホテルや“特殊関係人”がテーマであることから、性はより滑稽に描かれる。
「食」は冒頭でほんの数秒映される程度だが、その一瞬でもやはり訴えかけるよう魅力的な撮り方をされている。「同じ釜の飯」という慣用句は出てくるが食事シーンはなく、むしろ“食べない”ことが息子と亮子で反復して描かれる。
ラストシーンも二つのシーンのリフレインになっている。