シャチ状球体

ブロークン・ジェネレーション/撲殺!射殺!極限の暴力少年たちのシャチ状球体のレビュー・感想・評価

3.0
今年の「死ぬまでにこれは観ろ!2024」キャンペーンで新規にラインナップされて気になっていた、邦題が何だかすごい映画。

実在の連続殺人鬼達が皆幼少期に辛すぎる経験をしていたことが冒頭で説明され、主人公のロイとボーも愛情を受けられないような環境で育ったことが伺える。
二人ともいわゆる括弧付きの弱者男性的なマインドを持っており、周りは大学進学が当たり前の中で工場への就職、そして他に友達も頼れる人もいない。そんな実質孤立した状況の中で行き場のない怒りと憎しみがロイとボーの中で増幅していき、お互いに高め合った攻撃欲が留まるところを知らない。

一応ホモフォビックな発言をすることが許されないことだと描写するシーンはあるので、社会的に孤立した人が他者に危害を加えることで接点を持とうとする行動原理を映画の中で説明したかったのかもしれない。
男性ジェンダーに課せられる、男性として周囲から認められるための条件(恋人がいる、共助の輪には参加しない、家族を養うために自分を犠牲にする、etc)を満たせなければコミュニティから排除されてしまう空気から落ちこぼれた二人の陥った状況に対しての解像度は低く、特に事件に至るまでの過程をもっと丁寧に描くことはできたはず。
社会に蔓延るトキシック・マスキュリニティの呪いを解くことが加害者も被害者も生まれない世界に繋がるのだということが提示されていない以上、2024年に受け止めるには色々きつい。

若いチャーリー・シーンが見れることを除けば、時代に置いていかれている映画……。
シャチ状球体

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