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ベニーズ・ビデオのshxtpieのレビュー・感想・評価

ベニーズ・ビデオ(1992年製作の映画)
3.5
ベニーの家のリビングの壁には『モナ・リザ』とアンディ・ウォーホルの『マリリン・モンロー』のレプリカ、蝶の標本箱などが所狭しと貼られている。ラジオはボスニア内戦のニュースに続いて天気予報を告げる。ベニーが暗い自室でテレビのチャンネルをザッピングするーー自分で撮ったヴィデオ、政治の討論番組、ニュース、サッカーの中継、音楽番組……。息子が犯した罪が報じられていないかと、ベニーの母が新聞をめくっているーー政治面、社会面、文化面、くだらない広告……。

ミヒャエル・ハネケはポストモダン状況を悲観している。すべては記号で、すべてはフラットに均されている。特に理由もなく自室の前の通りをヴィデオカメラで写し取っているベニーは、記号の氾濫の中で現実感、現実との距離感を失ってしまっている。彼は「風景」すらヴィデオを通してしか見られないのだ。

『ベニーズ・ビデオ』はわかりやすく、悪く言えば啓蒙的ですらある。だけれども、あまりにも悲観的すぎではないか、とも思う。
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