ジジイ

有りがたうさんのジジイのレビュー・感想・評価

有りがたうさん(1936年製作の映画)
4.0
初清水宏。よかった。台詞のテンポの遅さに面食らうがすぐに慣れる。昭和10年にこんなオールロケの日本映画があったとは驚きだ。未舗装の伊豆のつづら折りの山道を路線バスがのんびりと走る。運転士は若き上原謙。行商人、旅芸人、農夫、馬車などを追い越すたびに「(道を譲ってくれて)ありがとー」と声をかけ、地元の人々から慕われている。途中当時日本の植民地であった朝鮮から道路工事に動員された朝鮮人労働者の一行にも出会い、ごく自然に会話を交わしたりする。ほのぼのとしたふれあいとは裏腹に社会は大不況の真っ只中で、庶民の暮らしがいかにも苦しいことも見て取れる。今やYouTubeでも観られる、日本が誇るべきロードムービーの傑作だ。
ジジイ

ジジイ