上原謙は、加山雄三と同じ男前であってもどこか影を感じる。加山雄三が光り輝く太陽なら、上原謙は静かに光る月だ。笑っていてもどこか寂しさを感じる。それがこの映画にマッチしていると私は思った。
有難うさんの運転するバスは、売られていく女を何人も乗せて運んだ地獄行きのバスなのだろう。それゆえに、有難うさんを演じた上原謙は素晴らしかった。「子供が生まれたら、おめでとうよりもお悔やみを言いたいくらいだ」という台詞も寂しさを感じさせる。
また、全編ロケーションで撮影された伊豆半島の美しい自然も良かった。しかし、バスが人を追い越すシーンが無いのは、少し違和感を覚えた。何か意図があるのかも。