Eike

インシディアスのEikeのレビュー・感想・評価

インシディアス(2010年製作の映画)
3.5
監督のジェームズ・ワンと言えば「SAW」(2004年の一作目)の生みの親ですがマレーシア生まれのオーストラリア育ち。
低予算ホラーを中心の活動でしたから必ずしもヒット作連発とは行かなかった模様ですが、地道に力を付けた後にブロックバスター作である「ワイルドスピード」やDCアメコミヒーロー作「アクアマン」も任されてちゃんと結果を残しております。

2010年の本作を見て想起したのはS・ライミの「スペル」と80sの代表的ホラー作「ポルターガイスト」。
特に物語はほぼ「ポルターガイスト」を倣った内容になっています。
新しい家に引っ越してきた家族が異変に襲われ、幼い息子に危機が及ぶというもの。
心霊分野の専門家が出てきたり、息子の魂を救うべく異界に赴く親の活躍も同様。
しかし80sの名作がSFXを駆使した「特撮ショー」を意図していたのに対して本作のアプローチは至ってシリアス。
このシリアス加減がやはり魅力的。
それは観客を怖がらせてやろうという「やる気」の表れでもあるわけで、ちゃんと怖いです。
と言っても生理的な嫌悪感でごまかすようなシーンはほとんど出てきません(実際の所、人もほとんど死にません)。
これだけでも本作を評価したくなりました。
光や影、音、視線の揺らぎ、タイミングのずらし方。
それだけで「ちゃんとコワい」。
昔は技術や予算面での制限が大きかったおかげでこうした演出でカバーするしかなかった訳ですが、なまじCG映像の導入が可能となった事から「なんでも見せてやろう」という傾向に拍車がかかった気がして逆につまんなくなりましたね。

そんな流れの中で本作は久しぶりの「本格ホラー」といって良い作品だと思います。
P・ウィルソン、ローズ・バーンそしてバーバラ・ハーシーと「華」には欠けるものの演技面では実力派の布陣を揃えた辺りも好感度が高い。
しかし驚いたのは本作の撮影はわずか3週間であったということ。
メジャー製作の作品としては超早撮りと言えるでしょう。
さすがワン監督は低予算ホラーからの叩き上げなのであります。
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