♪ But I'm a creep I'm a weirdo
What the hell am I doing here?
(しかし、僕は気味が悪い。僕は変な奴。
ここで、何をしているんだろう?)
日本では劇場未公開作品。
しかも、巷の評価は低い…のですが、世間の評判を鵜呑みにすると“モッタイナイ”と教えてくれる作品でした。傑作とは言えませんが、確実に良作です。
物語のジャンルとしてはホラーの範疇。
でも、異物や怪物を怖がる系ではありません。
どちらかと言えば、千切れそうな切なさに痛みを感じる系。恐怖を主眼に臨むと肩が下がるのは間違いないでしょう。
しかも、物語としては少し複雑。
英語圏とスペイン語圏の二つの舞台が絡み合い、どこで何が繋がっているのか明らかにならない…そんな構成なのです。
だから、解きほぐすような視点が大切。
ほつれた糸をを辿るように、心の奥を見据えるように。想像力を働かせて指を伸ばす…能動的な姿勢が本作を面白くする調味料です。
ただ、正直なところ。
丁寧な筆致だから間延びしているように見えますし、闇の向こう側が“見慣れた光景”の可能性もあります。この辺りのバランスは難しいですね。
でも、最終的な視点が目新しいのは事実。
何故、怪物は貌を探すのか。道端でキスを交わす恋人たちに視線を向けたのは何故なのか。劇中では明言されませんし、矛盾も孕んでいますが、それでも「悪を悪」と断じないのは“優しさ”だと思います。
あと、伏線の張り方も巧みでした。
物語のきっかけとなる存在や、展開が加速するポイントを日常に紛れ込ませているんですよね。ゆえに“気付く人だけが気付く”という奥ゆかしさがあるのです。
まあ、そんなわけで。
感情を丁寧に紡いだホラー、というよりもサスペンス。出来れば巷の評価を鵜呑みにせずに触れて戴きたい作品です。派手な演出はありませんが、子役たちが可愛いのも眼福ですよ。
それにしても。
「スペインの映画って根底にミステリへの愛が流れているのだな」と再認識しました。昔の日本も、こういうテーマを地上波で取り扱っていたものですが…視聴率に囚われて滋味を失ったのかな。残念。