タチは観客が望む全てを見せてくれる。
見たいもの、聴きたいもの、期待したもの全部だ。
彼は本来存在するはずのないカットという編集で、舞台劇に映画としてのリズムを加えていく。
しかしそんなカットされた間すらも頭で補完してしまうほど、私達はショーにのめり込んでしまう。
気付いたら自分もあの観客席で手を叩いているのだ。
そしてどんどん演者と観客との境界が取り払われ、サーカスは終わりに向かう。
ショーが終わると子供達が舞台に上がり、真っ白なステージに自由に絵を描いていく。
タチは次の世代の為に、ステージを塗らないでおいたのだ。
そして舞台からタチはいなくなり、まるでバトンを渡すようにしてこの映画は終わる。
タチの目指した喜劇の民主化はこれで完成したのだ。