不在

太陽はひとりぼっちの不在のレビュー・感想・評価

太陽はひとりぼっち(1962年製作の映画)
4.8
大戦の終結後、人々はただ生きることに必死だった。
それまでの文明は一度破壊され、原始的、動物的な本能によってのみ、人は生かされていた。
しかし戦後のめざましい復興が、人類を再び物質の世界へと誘っていく。
科学による文明的な生活が都市から自然を排斥し、やがて人々は自らの神すら見ようとしなくなった。

だがそこに新たな神が現れる。
つまり金だ。
人々は豊かさこそ神とし、貧しさを悪魔とした。
現代では、神の不在が悪魔の存在をより雄弁に語るようになってしまったのだ。
だから彼らは教会の代わりに証券取引所へと足繁く通い、悪魔の手すらも借りて、神の恩寵を独占しようとする。
こうして人間は隣人への愛を見失った。
彼らはかつて愛と呼ばれたものを模倣し、演じ、再現するしかない。

この映画では、人間への回帰を謳ったヒューマニズムが、却って人間の美しさを覆い隠している。
自然を捨て、信仰を捨て、愛すら捨てた人類に残されているのは、IKEAのカタログだけだ。
不在

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