キャサリン子

幸せなひとりぼっちのキャサリン子のレビュー・感想・評価

幸せなひとりぼっち(2015年製作の映画)
4.0
愛妻に先立たれ人生に絶望した老人が、隣人一家との交流を通して徐々に心を開いていく人間ドラマ。


最初わたしはオーヴェに対し、「イヤなジジィだなぁ…こんな偏屈オヤジが近所にいたら嫌だなぁ😨」と思っていたのですが、映画とは不思議なもので、観ているうちにだんだん可愛く見えてきちゃいました(笑)
というか、偏屈でイヤなジジィなのではなく、実はオーヴェはとっても正義感が強くて、曲がったことが大嫌いな正直者なんですよね。不器用な性格のせいで、誤解を招きやすいけれど。
オーヴェが本当は優しくて困っている人を放っておけない性格なのだということを周囲の人はちゃんと知っていたから、見放さずに関わり続けようとしてくれていたのでしょうね。
妻に先立たれて失意のドン底にいるということも、皆理解してくれていたのでしょう。


オーヴェは、周囲の人に頼られ必要とされることにより、自分の存在価値を見出だせたのだと思います。
迷惑そうなことを言っていても、本心はまんざらでも無かったはず。
仕事もクビになり、唯一の家族である最愛の妻に先立たれ、友達もいない。
自分を必要としてくれている人なんて、誰もいない…そう思っていたに違いありません。

『誰からも必要とされないことほど悲しいことはない』と学生時代の恩師が言っていましたが、まさしくオーヴェの悲しみは妻に先立たれた喪失感よりも“自分には存在価値など無い”“誰からも愛されていない”という孤独感に由来するものだったのではないでしょうか。
そんな風に思い詰めていたオーヴェも、頼まれごとを引き受けたり人のために何かをすれば喜ばれ、病で倒れれば泣いて心配してくれる人達がいることを知り『自分はひとりぼっちなんかじゃない』と気付きはじめます。
ようやく、孤独の闇から抜け出すことが出来たのです。


前半は笑えるシーンがたくさんあり、ラストはホロッと泣ける良質な作品でした。
オススメです。
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