くまちゃん

ガス燈のくまちゃんのレビュー・感想・評価

ガス燈(1940年製作の映画)
3.8
パトリック・ハミルトンによる戯曲を原作とした英国映画。

裕福な女性が殺害される冒頭。
これからの90分。如何様なミステリーが展開されるのか。観客は探偵が犯人を追い詰めるエクスタシーを無意識に渇望し、アガサ・クリスティさながらの推理劇を求める。

しかし今作で描かれるのは表層的な娯楽ではなく、心の奥底に一本の杭を刺されるような鈍重で目を、耳を塞ぎたくなるような心理的虐待の数々。
決して公開当時に限った話ではない。
むしろ多様化を叫ばれる現代のほうが顕著であり、社会的に大きな問題となっている。DV、虐待、洗脳、他人の人権を否定しアイデンティティを崩壊させ、自己肯定感の低下と躁鬱を招く卑劣で下劣な究極のエゴイズム。

イギリスは歴史的に階級社会とされている。
夫は外国人。メイドが二人。挨拶するな。格が下がる。と後ろ指を指されるマレン夫妻。
貧しい子供たちに食べ物を買い与えるB.G.ラフ。
上層階級のもつ傲慢、欺瞞、見栄が垣間見え、同時に貧富の差も描くことでただのサスペンスではなく社会性を強く押し出している。
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