安堵霊タラコフスキー

人間ピラミッドの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

人間ピラミッド(1961年製作の映画)
4.9
凄くモヤっとさせられたけど、それだけ色々考えさせられる作品

で、その考えさせられた点というのは人種問題よりも映画というものについてであり、この作品は黒人と白人の学生をキャスティングしてドラマを撮るという、後にニコラス・レイがやったような試みを取っているのだけど、結構カンペ読んでんじゃないかってくらい目線をチラチラ動かしたり滅茶苦茶素人演技な場面も散見されたりで、そういった意味での印象としては映画学校の実習なり修了制作なりに近いものがあったのだけど、にもかかわらず演出的な拙さはほとんど感じられなくてこの違いは一体どこから生じるものなのかと甚だ疑問だ

しかもそれでいて基本演技が拙いキャスト陣からも時々熱の入った台詞が聞こえてきて、おそらく台詞と気持ちがしっかりリンクしたからだろうと推測はできるもののもしかしたらアドリブで思ったことを言ってるだけという可能性もあり、よく使われる文句ではあるが果たしてどこから虚構でどこまでが現実なのか実に曖昧になるシーンが多々あったのにも奥深さが感じられた

極めつけが登場人物の死を暗に描写したところで、死体の表現とかが一切されていないにもかかわらず荒波の中という本当に死に繋がってもおかしくない状況もあってその後取ってつけられた、事前に撮っておいて後でぶっこめるようなラストにしか登場しないその人物がもしかしたら現実でも亡くなってるのではという疑念が拭えず、そのせいで最初に述べたモヤモヤした気持ちで映画を終えることとなってしまった

ジャン・ルーシュ自身の胡散臭くも思える説明的で白々しいナレーションも加え、途轍もなく事実と虚構が不明瞭な作品となっていたけど、その為安っぽさに反して忘れ難いものにもなった作品だった