安堵霊タラコフスキー

哀れなるものたちの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.8
主に70年代に作られていた芸術系映画、特にハンナ・シグラをマルタという役でゲストに招いていることからもわかるようにファスビンダーへのオマージュ色が強い作品。

そんな芸術的作風で成人女性に赤子の脳が埋め込まれるという突飛な内容、そして性描写がてんこ盛りのお下劣な映画でありながらもブラックコメディとしても強烈なので刺激的なエンタメ作品に仕上がっているのが見事で、それでいてエマ・ストーン演じるベラの成長っぷり苦笑しつつ最終的に胸を打たれるところもあったのが驚きで子供が楽しむのに適していないバービーとも言える良さもまた素晴らしかった。(しかしこんな本質的に通じる映画が、それぞれエマ・ストーンにマーゴット・ロビーというこれまた似た特徴の女優で同年に公開されるってのは凄い偶然)

最初モノクロで一回カラーになってからエマ・ストーンのベラパートだけじゃなくウィレム・デフォーの博士らのパートもカラーで撮っていたことに違和感があったのと(ベラが旅で性欲に本格的に目覚めてのカラー化なら博士パートはモノクロのままの方が良かったように思う)オチの展開がちょっと残念だったのが不満ではあったが、それ以外は文句をあまりつけたくならないくらい文字通り出色の作品で鑑賞後良い余韻にも浸れた。

ところでこの作品でも悪い男として存在感を発揮しているマーク・ラファロ、ずっと雰囲気がマーロン・ブランドに似ていると思っていたから途中で欲望という名の電車みたいなことをしてて面白かったのだけれど、やはり監督も演技力含めて似ていると感じたからパロディっぽいことをさせたのだろうか。