半兵衛

月曜日に乾杯!の半兵衛のレビュー・感想・評価

月曜日に乾杯!(2002年製作の映画)
3.9
冒頭の様子からいつものイオセリアーニ監督らしいノンシャランな日常を描いたドラマかと思いきや、中盤から突如決められたルーティングの日常に嫌気がさし失踪まがいに旅に出た主人公の中年男性がメインになるのに驚き。でも主人公が勤める近代的な工場を違和感のあるものとして描いているので主人公の行動に自然に共感してしまうし、舞台となるイタリアでも日常とユーモアを愛する監督のスタイルは健在なのでこういう発想のドラマもありかなと思えてくる。

一応中年男性が主人公ではあるが、男性の家族やその周辺の人々の生活をスケッチタッチで描いているため劇としての要素は薄い。ドラマも起伏が薄く、メインの中年の失踪も特に盛り上がるわけでもなく淡々と進行していき結局はいつもの日常を愛でるイオセリアーニの作風に。でも色んな登場人物に目移りしすぎていてちょっと視点がバラけているところも。

ただその分ラストカットで映る現代的なものが人間を侵食する不気味な機械のように見えて心を不安にさせる。監督にとって冒頭での工場といい進みすぎた機械は畏怖の対象なのだろう。

主人公が禁煙のマークが記されている場所でも堂々と吸い、そんな彼を他の人がとがめることで人間性の喪失を訴える監督の姿勢はユーモアだけどどこか辛辣。だとするとたばこを吸う人に異様に厳しい現代の日本は人間性のない社会になるのか。

序盤工場で女性のお尻がきっかけで大トラブルが発生するやりとりが笑える。
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