くりふ

焼け石に水のくりふのレビュー・感想・評価

焼け石に水(2000年製作の映画)
4.0
【愛と股間の狂い咲き】

オゾン新作『危険なプロット』の特集上映にて堪能しました。オモロかったです!

愛に正直であることと欲望に正直であることのすれ違いと愚かしさ。まあ愛だって欲望のひとつに過ぎませんが。四角関係からひろがる下半身ネットワーク一夜の狂乱、そのあとさき。

日本初公開時は、咄嗟にハル・ハートリー『シンプルメン』を思い出してしまった脱力ダンスシーンに惹かれたものの、ずっと見逃していたので懐かしくもありました。実際にみると、あのシーンだけ「観客に向けて」のショー演出になっていてちとシラケましたが(笑)。

R・W・ファスビンダーの戯曲が原作だそうですが、本作の強さはかなりの部分、そこに依っていると思う。事件の発端となるけもの男、ベルナール・ジロドー演じるレオポルドの強さの質が、オゾン作品では珍しいと思うのですよ…既視5作からの印象ですが。

とりあえず、無自覚なサディストでもあるレオポルドの人物像は、ファスビン作『マルタ』のサド夫と同系ですね。始め同じ役者が演じているかと錯覚しちゃったほど。

そして始終残酷である男を肯定も断罪もせず、惑わされる側が愚かであれば何も変わらない…とするクリアな視点がファスビンダーらしいと思う。

『マルタ』では結婚ってどこかSMだなと思ったものですが、本作ではその手前、恋愛してる時点でSMなんだと改めて思い出されました。リマインド効果あるわ(笑)。惚れた相手には何をされても「尽くすドーパミン」が出続けてしまうものでしょうか…人によりけりでしょうけど。

つくりとして、86分という尺が締まりよい!また画の切り取り方がほどよくて、幾つか名画を思い出す強い構図も楽しめました。「裸のマハ」「テュルプ博士の解剖学講義」、最終カットでエドワード・ホッパー…辺りが思い出したところ。

で、オモロイ画面を右往左往するキャスティングが適確で巧いんですねえ。どんな人物でどんな魅力かすぐわかる。唯一、リュディヴィーヌ・サニエちゃん演じるアナが弱いですが、彼女をいかにもな軽女にしておかないと、こう巧くまとまらなかったのでしょう。

逆に、アンナ・トムソン演じるヴェラの、衝撃の本音語りは饒舌でちょいダレました。も少し象徴化できなかったものか。

視覚的快楽の一番は、やっぱりサニエちゃんの脱ぎっぷり!(きっぱり) 当時21歳のビッグパイに目眩がします。お尻はどこかあどけないですが。それを包む下着のブルーに鎮静効果があり正解。あれでピンクだったりするともう犯罪ですよ(笑)。

そこに並ぶ、アンナさんの細く歪な熟女美が面白いコントラストになって、眼がとにかく飽きませんね。

全体、ファスビンダーとオゾンの個性合わせが巧くいった好例だと思います。『危険なプロット』をみても正直薄味だったので、こうしたミックス味にまた、挑戦してほしいものだと思いました。

<2013.10.27記>
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