Panierz

下女のPanierzのレビュー・感想・評価

下女(1960年製作の映画)
4.0
主従関係の逆転劇、ひとつの間違いが大きな悲劇を生みます系の教訓ビデオ、あるいはフロイト的性欲動の啓蒙映画、みたいな感じなんですがまあ構造も展開も基本的に雑です。

ネズミや家屋爆発の寓意的な演出は、最近観たものでいえばシャブロルの『一寸先は闇』とかに通ずるダサさがあるけど、オチまで見るとそんなB級感にも妙な説得力が生まれ悪くない気がしてくる。
脚本の脆さも正直かなりのもので、主従関係の逆転もかなり無理矢理、レトリックでもなく一階建てを強引に二階建てにしたような展開なんだけど、その取って付けたような違和感しかない階段で地獄に堕ちていく様には一貫するアレゴリーの美しさがある。
このチープでありながら一貫性のあるわざとらしさが、スペクタクルとしての階段を生み出すのだろう。
これが計算なのか天然なのか、全く分からない奇妙奇天烈なキム・ギヨンの底なし沼に片足を踏み入れつつある。
Panierz

Panierz