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カノンの8bitのレビュー・感想・評価

カノン(1998年製作の映画)
3.9
「カルネ」の馬肉屋鬼畜親父のその後。

とにかくクズな馬肉屋鬼畜親父の八方塞がりな日常を延々と見せられ、
生きることの虚しさや世の中への不平不満といった親父の心の叫びをモノローグで延々と聞かされる。
もう笑っちゃうくらいどうしようもなくて、哀れで、うんざり。
自分にはもう何も残っていないのか。
絶望に打ちのめされたとき、自分の中にひとつだけ残っていたものに気付いた。
それが〝愛〟だった。
「30秒以内に映画館を出ろ!」という〝警告〟後の衝撃シーンからのカノンは感動的だけれど、その後のシーンで凍り付く。
彼の〝愛〟は、〝モラル〟というフィルターを通した我々のそれとは少し違っている。
でもそれはとても純粋なもので、これもまたひとつの愛の物語なのだと思う。愛にめざめた男の物語。
おそらく〝警告〟されていたのは血なまぐさい暴力シーンではなく、観る者のモラルや倫理観を揺さぶるラストシーンに対してだったのだろう。
普通なら露悪的に映ってしまうものをここまで無垢に見せてしまうギャスパー・ノエは本当に凄い。

この馬肉屋鬼畜親父(とその娘)のその後は次作「アレックス」でチラッと描かれています。
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