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ラスト・ハウス・オン・ザ・レフト -鮮血の美学-の消費者のレビュー・感想・評価

4.2
・ジャンル
ホラー/スリラー/スラッシャー/サスペンス/リベンジ

・あらすじ
両親と共に別荘へバカンスにやって来た17歳の少女メアリー
彼女は到着して早々、久々に親友ペイジへと会いに行く
そしてペイジのバイト先であるコンビニで同じ年頃の少年ジャスティンと出会う
煙草を買おうとする彼は身分証を確認しない交換条件として高級品の大麻を提供すると持ちかける
初めは警戒していたメアリーも自分が兄を失ったのと同じ様に彼が母を失ったと聞き心を許すのだがその時、彼の父クルーグと恋人のセイディー、弟のフランシスが現れる
見るからに柄の悪い彼らは警察車両を襲撃し逃亡中の犯罪者集団だった
自分達を目撃した2人を一行は帰そうとせず、何度も逃走を図るが全て失敗に終わり挙句の果てにペイジは殺害されメアリーも犯され銃撃を浴びてしまう
一方その頃、何も知らぬメアリーの父ジョンと母エマは2人だけの時間を過ごしていたのだが嵐の中で車が事故に遭ったという集団が訪ねてくる
医師であるジョンは怪我の処置を施し彼らを離れに泊まらせるのだがしばらくするとメアリーが瀕死の状態で帰宅
集団の正体は奇しくもメアリーを襲った犯人だったのだ
2人はどうにか彼らに気付かれる事なく娘を病院へ運ぼうとするが事はそう上手く運ばず、やがて戦う事を余儀なくされ…

・感想
‘72年にウェス・クレイヴン御大が手掛けた名作スラッシャー「鮮血の美学」のリメイク版
プロデューサーには彼自らが名を連ねており、共同プロデューサーとして息子ジョナサン・クレイヴンも参加している

原作は陽気な音楽や間抜けな地元保安官達と凄惨な事件の模様が奇妙なギャップをもたらす救いの無い悲劇だった
対して今作では徹底して全てがシリアスな内容になり、救いの無さが僅かながら緩和されている
そして事件発生から両親による復讐に至るまでが短縮され、重体ながらメアリーが生還している事もあり構成としては両親の視点が主体に
原作の方が徹頭徹尾胸糞悪いのは確かな一方でこちらはこちらで娘の被害を嘆き苦しみながら復讐を余儀なくされる両親の心理がまた違った厭さを味わせてくれる
その上、メアリー達が被害に遭うまでの過程がよりリアルになっているのもあって陰惨さと生々しさ、緊迫感も健在

肝心の両親による復讐も感情的に突っ走るのではなくあくまで娘を早急に病院へ搬送する為というもっともな理由があり没入観が原作以上に強い
更に復讐による第一の死者フランシスの殺され方がまた計画的でないのにちゃんとエグくてゴアの面でも割と満足させてくれる
このフランシスを演じているのが「ブレイキング・バッド」のジェシー役でお馴染みのアーロン・ポールなんだけどこれがまたハマり役なんだよな…

また原作では英語Wikiを読まないとクルーグの息子ジュニアがヘロインで支配されていたという背景が分からず罪悪感やトラウマの描写こそあるものの誤解されそうな所を今作の彼にあたるジャスティンはしっかり彼もまた被害者であると示されていてそこも良かった
こういう繊細さは全編通して見られて後の展開への想像を掻き立てる描写も巧い

惜しい所としては時代の変化による物なのかもしれないけど前述の通り救いの無さ、そしてクルーグ達の悪趣味さが軽減されていた事に加え、結末まで観ると原作ラストの虚脱感溢れるソレとは真逆になっていてメッセージ性が薄まりやや凡庸になっていた点などがある
ただ最後の復讐は映画らしいド派手さと父親ジョンが医師という設定を存分に活かした手法が両立されていてその惨さである程度カバー出来ていたかな、と

一応、これで原作とリメイク両方を鑑賞出来たけど原作には「処女の泉」という元となった作品があるという事でそちらも鑑賞予定
大分内容は違いそうだけどレビューをチラ見した感じは期待して良さそうだったので気になる
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