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『愛の彷徨』に投稿された感想・評価

シチリア祭り(18)

リーナ・ヴェルトミューラーもシチリアに見せられた監督。彼女の『Mimì metallurgico ferito nell'onore(名誉を傷つけられた冶金工のミミー)』 (1972)はカターニアの共産党支持者がトリノに出稼ぎにでかけ、カターニアに帰ってきたときはすっかりマフィアになっていて、「名誉(onore)」をめぐる大どんでん返しの話だったけど、その6年後のこちらの映画のタイトルもやたら長くて「Fatto di sangue fra due uomini per causa di una vedova. Si sospettano moventi politici. (ひとりの未亡人をめぐって二人の男の流血沙汰。政治的な動機も疑われる)」というもの。

時代は1922年。ちょうどファシストのローマ進軍がなされるころ。舞台はアグリジェント近郊のコミティーニで、ここにナポリから嫁いできたというティティーナ/ソフィア・ローレンは、夫を殺されて未亡人となる。ローレンのセリフは自身の御国ことばのナポリ弁で、劇中では「あのナポリ女(quella napoletana)」と呼ばれている。

その夫を殺したヴィートを演じるのはシチリアを舞台にした映画には欠かせないカターニャ出身のトゥーリ・フェッロ。彼の演じるマフィオーソは、やがてこの地で黒シャツ隊を率いることになる。

一方、ローマから故郷コミティーニに帰ってきた社会主義者の弁護士ロザーリオ・スパッローネ(マストロヤンニ)は、ティティーナの夫の殺害事件を裁判に持ち込もうとするが、ティティーナはなかなか心を許さない。しかし、ヴィートが彼女を襲うところを助けたことで、彼女はロザーリオに心と肉体を許す。

そこに登場するのがジャン・カルロ・ジャンニーニ。彼の演じるニック・サンミケーレはティティーナの夫の親戚で、アメリカ帰りの暗殺人であり密輸成金。あろうことか、ティティーナ/ローレンは、彼ともまた関係を持つ。

こうしていがみ合うニックとロザーリオだが、そこに絡んでくるのが黒シャツ隊のボスとなったヴィート/トゥーリ・フェッロ。しかも、ティティーナは妊娠しているというのだが、それはニック/ジャンカルロの子なのか、それともロザーリオ/マルチェッロの子どもなのか?

こうして三つ巴の争いとなるわけだけど、まるでシチリアのシンボル「トリナクリア」状態になる、ラストシーンの港でのドンパチのシーンはなかなか見せる。ただそれまでは、少々重苦しくて、消化不良。『冶金工のミミ』で見せた軽やかさとは程遠い。

それはおそらく、時代の雰囲気もあったのかもしれないな。この映画のイタリアでの公開は1978年の年末だが、その年の春には赤い旅団によるモーロ元首相誘拐殺人事件が起きているのだ。

ローレンはこの映画の前年にスコラの『特別な1日』(1977)を撮ってふっきれたのだろう。この映画でもナポリからシチリアに嫁いで未亡となったティティーナを、まさに体当たりで演じていて好感。マストロヤンニもジャン・カルロ・ジャンニーニも悪くないけど、ウェルトミューラーの作品としては、軽やかさとユーモアに欠ける。だから、彼女に期待していたグロテスクさが際立ってこない。そこは残念。
ままならない事情を持った、男女の三角関係。

愛があってもままならない事情や感情によって、上手くいきそうな事が上手くいかない。

そんな人生の一場面を見せてくれます。

ソフィア・ローレンがどんなときも信念を崩さない女を演じています。
イタリアの女性って、こういう芯があるものなんだなと感じさせます。

素敵な男達に愛される芯のある女性。