てながあしなが

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)のてながあしながのレビュー・感想・評価

4.5
三島由紀夫のドキュメンタリーを見て、当時の日本における共産勢力に興味を持ったので見てみた。
本作は連合赤軍の山岳ベース事件、あさま山荘事件を中心に描いたドキュメンタリー。そこまで期待せずに身始めたんだが、めっちゃ面白かった。3時間であることを感じない。

中核派が逮捕→徐々に強硬派の声が大きくなっていく という過程が生々しい。過激派が暴力装置を独占してしまうと一気にタカ派に傾斜してしまうんだなぁ。
序盤からサークルの合宿を偽って爆弾の実験したり、銃ほしさに銃器店に強盗に入ったりと破茶滅茶である。共産主義革命(人民革命)という美名を使うことで、いつの間にやら警官の銃を奪うという目標を掲げたり、身内を処刑することが正義みたいになっていて驚いた。

とりわけ、「総括」がリンチを正当化するような言葉になっているのは注目に値する。こうした非合法行為を正当化するジャーゴンは、オウムの「ボア」に通底するものを感じる。(あれは対外的な言葉ではあるが)「総括してこい」(あとは「おのおのを革命化する」「自己批判する」もか)というあいまいな指示で訓練に放り出し、その後「総括が甘い」「そうじゃない」などとひたすら罵倒するというのは、先日読んだ北九州監禁殺人事件を描くノンフィクション『消された一家』にも出てきたな。あいまいな指示を出した後に結果を徹底的に非難するというのは、人間を支配する上で非常に効果的だ(松永太はこれを極限まで進めた結果、具体的な指示をしていないのに義弟に実子を殺害、解体させている)。今回は内部でリーダーの目から離れたリンチが起きたということはなかったが、NO.2永田洋子による締め付けが相互監視的な集団を形作った可能性は十分にある。こうしたカルト的?な集団が狂気に支配されていくさまは非常に興味深かった。

大真面目に銃の扱いを練習し、軍事訓練をしているのも、今見ると笑止という感じだが、当時は真剣だったんだなぁ…。


山荘での立てこもりの緊迫感も白眉だ。巻き込まれてしまった女性に感情移入してしまった。そういや、有名な鉄球のシーンはなかったな…。